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スロー・プロダクティビティ:目標達成と幸福の新たなバランス

2024年5月15日

なぜ毎日がこんなにも忙しいんだろう

このように感じることはありませんか。それは社会や個人が「疑似生産性」に囚われているせいかもしれません。疑似生産性とは本来の成果とはほとんど無関係の物事をこなすだけで生産性があると思い込むことで、一言で表すなら偽の生産性です。

仕事やプライベートにおいて、処理済みのタスクリストの長さ、多忙さを自慢にしている人も少なくありません。なぜなら、膨大なメールのやりとり、びっしりと詰め込まれた予定はたくさんの人の目につくので、成果と関係のないことでも生産的だと見なされるからです。疑似生産性は、不利益であるだけでなく、消耗感や閉塞感を生み出します。

大事なことに集中する』『デジタル・ミニマリスト』などで生産性向上をアドバイスしているカル・ニューポート氏の著作『Slow Productivity: The Lost Art of Accomplishment Without Burnout』より「スロー・プロダクティビティ」を紹介します。スロー・プロダクティビティは①自分のやることを最小限に絞って、②自然なペースで、③クオリティを高めていく手法です。見せかけの生産性ではなく、無理せずに自分のペースで望む成果を手に入れることができます。

スロー・プロダクティビティでやりたいことをして、趣味や人付き合いを楽しみながら、高い生産性を達成できます。「多忙さは美徳」という考えを打ち破り、穏やかなペースで仕事と私生活のバランスを取ることができます。目標のために副業やハードワークで疲弊している方におすすめの内容となっています。

疑似生産性で燃え尽きる

現代人は忙しさを生産性の指標としています。特に知識労働者はメールへの素早いレスポンス、多くの会議やタスクによって一層の忙しさが必要だという信念が根づいています。個人や企業に価値をもたらす本当の成果ではなく、目に見えることをいくつ達成したのかが重視されています。

これを「疑似生産性」と呼び、実際の生産性を測る手段の代わりとして、目に見える活動で測ることを言います。この価値観は社会的に浸透しており、ハードワークを強要したり、残業する社員を高く評価したりしています。

なぜ本当の成果ではなく、疑似生産性が蔓延しているのでしょうか?それは目に見える活動はただ単に分かりやすいからです。

オフィスに職員がいたり、メッセージが定期的に届いていたりすれば、少なくとも何かをしていると思うでしょう。目に見える活動が増えれば増えるほど、組織に貢献していると考えられています。これが現代人が常に忙しくしないといけないというプレッシャーを感じる理由です。

しかし、疑似生産性は実際の生産性を測る指標とはなりえません。むしろ、働きすぎ、バーンアウト、無駄な仕事を増やします。まったく関係のないことで忙しそうな人が評価されるようになるとモチベーションも低下します。

スロー・プロダクティビティの3つの原則

私たちの社会では疑似生産性で実際の生産性を測られています。しかし、これには全く根拠がなりません。むしろ疑似生産性でもたらされる、過重労働による集中力の欠如、評価への不信感による生産性の低下が問題です。

本当の生産性を高めつつ、持続可能なものにするには「スロー・プロダクティビティ」の考え方を取り入れましょう。スロー・プロダクティビティは以下の3つの原則に基づいています。

  1. やることを減らす
  2. 自然なペースで作業する
  3. クオリティを追求する

スロー・プロダクティビティは重要な活動に集中し、穏やかなスピードで、仕事のクオリティを高めることです。ライフハックで「やることを減らす」「クオリティを追求する」はよく目にしますが、自然なペースで働くというのが新しいですね。現代人が悩まされている「疲労感」を解消しつつ、高い成果を生み出すという考え方ですね。

原則1: やることを減らす

やることをできるだけ減らしましょう。無駄を削ぎ落とし、最も重要なプロジェクトに取り組みます。

シンプルさと人生の目標は両立できます。むしろ、行動を少なくすることでより良い結果が得られます。自分のリソースをやりたいことに集中投下できるからです。

数学者のアンドリュー・ワイルズはフェルマーの最終定理を証明するため、関係のない仕事をすべて断り、会議や講演会に出席するのをやめました。最低限の義務である講義を行い、自宅の書斎で仕事をし続けた結果、フェルマーの最終定理を証明しました。

計画的にやることを減らすために、以下の手法が有効です。

  • 作戦:仕事を減らす一方で、簡単かつ効果の高い業務改善は従来通り続けるといった作戦を立てる。
  • ルール:飲み会にできるだけ出席しない、負荷の大きい仕事は断るなどのルールを定める。
  • 習慣:在宅勤務で通勤時間を減らすといった労力が少なくなるような習慣を身に付ける。

無駄をなくすコツは、今までの行動をとりあえずやめてみることです。問題が起きたら工夫したり、元に戻したり、別の手段を試したりするといいでしょう。

原則2:自然なペースで仕事をする

重要な仕事を自然なペースで行いましょう。仕事を持続可能なものにし、状況に合わせて強弱をつけ、高い生産を生み出すために、穏やかスピードで取り組みます。

Slackによる世界中の従業員1万333人を対象した調査によると、職種に関係なく、「生産性を最大化させるための集中時間は1日約4時間」であることが分かっています。また、従業員の71%が「午後3時から午後6時の間は生産性が落ちる」と報告されています。つまり、午前中に大事な仕事を4時間行うことが生産性を高めるということです。

コペルニクスの地動説を著した『天球の回転について』、ガリレオの振り子の長さが同じなら振り子が1往復するのにかかる時間は同じになる『振り子運動の法則』、ニュートンのすべてのものが互いに引き合う力を持っている『万有引力の法則』は発見から著作として発行されるまで数十年以上の歳月を要しています。これらの偉人はずっと働きづめであったわけでなく、長期休暇、旅行、趣味を楽しみつつ、ゆっくりとしたペースで仕事をしていました。成功するまでには膨大な時間が必要だからこそ、自分にとって心地よいペースで進めることが大切なんですね。

現代では早い・忙しいが美徳とされているので、意識的にゆっくりとしたペースで進めていきましょう。ゆっくりと作業することや休むことに罪悪感がある方は、「何もしない時間」を作ってください。何もしない時間の実践法、メリットについては、以下の記事で紹介していますのでご覧ください。

原則3:クオリティにこだわる

作品のクオリティにこだわりましょう。高いクオリティの作品の価値を活かしつつ、長期的に自分の好きなことに打ち込めるようにしてください。

高いクオリティの作品を生み出すには自分のスキルを高めなければならず、そのためにはスピードを緩めなければなりません。一時的に制作スピードが落ちますが、結果的に自分のスキルがさらに高まることでより高品質の作品を提供でき、貴重な人材として認知されて収入が上がります。

クオリティを上げるための方法を紹介します。

  • センスを磨く:クオリティを高めるには「そもそも何が良いもの」なのかを理解していないといけません。そのためには、何が良いかを認識するために多くの作品やサービスにふれて、自分のセンスを磨く必要があります。高いセンスを持っていれば、自分が理想とするものを作るために技術を高めていくだけです。
  • 意識的な努力を継続する:理想と自分が作る作品にはギャップが生まれるのは当たり前です。大切なのは、そのギャップを埋めるために、意識的な努力を続けることです。ほとんどの人は継続できないので、意識的な努力を継続するだけでも圧倒的な差が生まれます。

短期的な視点になるとその場を切り抜けることに意識が向いてしまうので、長期的に自分の能力を向上させる時間を持ちましょう。

まとめ:「忙しい」の呪縛を解いて「穏やか」な毎日を過ごそう

「忙しさ、真剣さ、結果」は過大評価され、「穏やかさ、楽しさ、プロセス」は過少評価されています。長い目で見れば結果もプロセスの1つに過ぎません。そのため、人生はプロセスの連続と言ってもいいでしょう。

スロー・プロダクティビティは自分が望む成果をもたらしてくれます。短期的な結果や目先の欲望に飛びつくことなく、広く長期的な視点に立つことができます。

見せかけの活動ではなく、本当の目標に向かって自然なペースで進み続けることは思ったよりも困難です。競争社会のレースから抜け出すには「ゆるく生きる」、自分に価値観に合った行動をするには「己を知る」を参考にしてください。

私は読書や執筆の一辺倒でしたが、スロー・プロダクティビティを実践してから、人付き合い、余暇も充実してきました。仕事量・スピードを重視していたときは心身があまり休まりませんでした。今では読書、執筆をマイペースにやっているので、ラクになりました笑。

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