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不況時の「社会保護政策vs緊縮財政」、どっちがいいのか?

2021年3月22日

不況時には社会保護政策と緊縮財政のどちらがいいのかといった議論になります。
この議論は究極的には、最優先課題は人命 or 経済ということになります。

不況時には、社会保護政策 or 緊縮財政のどちらがいいのかを調べた研究がありましたので、紹介します。

結論から申し上げますと、

  • 社会保護政策を実施すれば、景気は良くなり、人々の健康維持につなが

となります。

オックスフォード大学教授のデヴィッド・スタックラーらの研究(R)で、1930年代の大恐慌時にアメリカのニューディール政策で社会保護政策に積極的だった州と社会保護政策に消極的だった州を比較しています。
社会保護政策への積極的な実施の有無によって景気回復、人々の健康にどのような影響があったかを調べています。

当時、アメリカのルーズベルト大統領はニューディール政策を実施しましたが、実際にはそれぞれの州知事(リベラル派、保守派)によって、社会保護政策、消極的な社会保護政策(緊縮財政を実施した州もありました)が実施されました。
そのため、この比較は自然実験になります。

それでは、研究結果を見ていきましょう。

社会保護政策を実施した州では、消極的な州に比べて、伝染病疾患による死亡率、小児死亡率、自殺率が著しく低下していた
社会保護政策を実施したアメリカ全体では、国民の平均所得が9%上昇した
・結果的に、景気回復によって、政府の債務も減少の方向に動いた
・社会保護政策は、経済と公衆衛生に長期的かつ持続的な効果をもたらした

このような効果が出た理由としては、

社会保護政策を実施することで、不況時でも人々に持続的な健康、幸福を与えたことが健康の維持、景気上昇に繋がった
・経済よりも持続的な人々の健康、幸福をまず第一に考えることで経済成長が促される

不況時には社会保護政策が有効と言えそうですね。

個人的には、経済を優先にして、人々の健康をないがしろにすると、結局、経済に悪影響が出るのは納得できますね。
経済を動かしているのは人々なので。

ちなみにリーマンショックでも紹介した研究と同じような結果が出ました。
緊縮財政を実施した国では医療制度、失業対策、貧困世帯への支援の予算が削られ、人々の健康が悪化し、景気回復が遅れました。
社会保護政策を実施した国では、人々の健康被害が抑えられ、景気回復も早くなりました。

政府の政策は、客観的なデータに基づいて実施されることが大切ですね。
政策を評価する際には、客観的なデータに基づいているのかを意識していただけたらと思います。

参考文献
経済政策で人は死ぬか? ──公衆衛生学から見た不況対策

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