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世界各国から事例から見るインフレの対策。インフレを利用して儲ける方法とは?

「インフレの対策方法が分からない」と思う方は多いのではないでしょうか。インフレで物価が上がり、円の価値が下がるといっても、どのように行動すればいいのか見当がつきませんよね。

ドイツのハイパーインフレでは物価が10年ほどで1兆倍になり、多くの国民が困窮して食糧不足や失業などの壊滅的な損害をもたらしました。しかし、そのハイパーインフレ下でも、インフレを利用して大儲けした人もいます。

そこで今回は、イギリスの経済学者のスティーヴン・D・キング先生の著書『僕たちはまだ、インフレのことを何も知らない デフレしか経験していない人のための物価上昇2000年史』より、「インフレの兆候を見分けるサインと対策方法」を紹介します。こちらの本は元米国財務長官、元イングランド銀行総裁といった信頼のおける著名人が推薦している内容となっています。

ドイツ、イギリスやアメリカなどの世界各国の事例から、インフレ時に残すべき資産や対応方法が分かるようになります。簡単に実践できる内容ですので、「インフレが不安…」という方はぜひお読みください。

インフレとは、お金の価値が失われること

インフレは物価が上がるため、お金の価値が相対的に下がることを言います。所持金が1000円でリンゴ1個がインフレで100円から200円になった場合、インフレ前では1000円でリンゴ10個買えましたが、インフレ後には5個しか買えないことになりますよね。所持金の額面上の数字は変わりませんが、お金の実質的な価値は下がっています。

インフレではお金を現金のままで保有しているだけでは価値が失われていきます。現金や債権だけを保有していると購入できるモノが少なくなっていくので、生活が苦しくなっていくというわけですね。2%程度のゆるやかなインフレでは問題がないとされていますが、これより大きく数値を超えた過度なインフレは多くの問題が発生します。

世界中の過去の高インフレを参考に問題点を挙げます。

  • 国民の富を奪う:お金の価値を棄損するので、預金や債権を持つ人々の富を奪うことになります。政府の借金を返済するために、政府が消費税増税や社会保障費削減などに着手すると多くの人からの反発があります。お金を刷ることで社会保障費などに充てつつ、インフレでお金の価値を減らすことで楽に返済できるようになります。政府の借金をインフレで返済することを、国民に対する「インフレ税」とも言います。
  • 非合理的な行動が合理的になる:生活必需品や高級車や高級家電を買い占めたりして、貨幣ではなくモノを貯め込む人が増えます。実際に1990年代のトルコでは高級車が爆買いされていました。多額の借金をして不動産などの実物資産を買いまくるなどの非合理的な行動が、高いインフレでは資産防衛として合理的な行動になります。
  • 人々の時間を奪う:お金の価値が急速なスピードで下落していくので、モノの価格を頻繁に変更しなければなりません。これらの価格変更は高インフレでなければまったく不要な行為ですが、インフレでは値上げ対応に労力を割く必要があります。ハイパーインフレ下のドイツでは1杯5000マルクのコーヒーが、飲み終わった後には8000マルクになっていたというのは有名な話です。

高インフレになると、政府による大増税、大規模な支出削減が行われます。高い税率によって、資産の目減りを防ぐために、国民、特に富裕層が海外移住したり、税金逃れが横行するようになります。1970年代のイギリスでは、インフレによる大増税で有名な映画監督、俳優、ロックスターなどが税金が安い国に移住しています。

インフレの原因は、需要が供給を上回ること

インフレは「需要が供給を上回ったとき」に起きます。資源やモノ、人手に対する需要が高くなったときに価格が上昇します。

「需要が供給を上回ったとき」の原因は主に3つの要素が関わっています。

  • 資金供給量:資金供給量が増えるほど、インフレリスクが高まります。日本では紙幣を発行する日本銀行が民間金融機関から国債を大量に買い取って、市場に供給する資金量を増やすという量的緩和政策が取られています。そのため、国債を多く発行すればするほど日銀がお金を刷って市場に供給するため、個人や法人で使えるお金が増えていきます。しかし、際限なく発行できる貨幣とは違い、モノの供給量には限りがあるため、モノの価格が上がります。
  • 供給状況:供給状況の悪化がモノの価格上昇を招きます。地震などの災害や人手不足でモノの供給量が減ったり、資源や賃金高による生産コストが上昇したりすることはモノの価格を押し上げる要因となります。特に日本のような少子高齢化が進んでいる国では働き手が減るため、技術革新がなければ、需要量が供給量を上回る可能性が高まります。
  • 人々の消費行動:人々の消費行動や需要が増えるほどモノの価格が上がります。人々の消費行動が多くなれば貨幣の流通速度が増大したり、通貨、株、不動産などに投機目的で人が殺到したりすると、モノの価格が急激に上がります。人の行動は必ずしも合理的ではないため、実態の価値よりも大きく膨らむバブル、お金儲けのために買占めが起きたりすると、モノの価格がさらに高くなってしまいます。

インフレ要因は「資金供給量の増加」「供給量の減少・生産コストの増加」「人々の消費行動の増加」となります。ちなみに、デフレは「需要が供給を下回ったとき」で、上記の要素が反対になります。

悪いインフレ兆候を判断するための4つのサイン

そうはいっても、インフレが一時的なのか、長期的なのかは判断するのは難しいと思う方もいるでしょう。前者であればあまり気にする必要はありませんが、後者であれば対応が求められます。

インフレが深刻かどうかのサインを見ていきましょう。以下の項目に当てはまるほど、インフレが深刻である可能性が高くなります。

  1. インフレ圧力を高める制度はあるか?:2%のインフレ目標、マイナスやゼロ金利の導入など。
  2. 過剰な通貨拡大の兆候はあるか?:急激な需要拡大による資産価格バブル、国債の買い入れによる資金供給量の増加など。
  3. インフレリスクが矮小化されていないか?:デフレへの極端な嫌悪、インフレリスクの軽視など。
  4. 供給サイドの状況が悪化していないか?:災害などでモノの供給量不足、生産コスト増など。

世界的に見て、政府はインフレの誘惑に非常に負けやすいです。歳入確保の手段として増税、公共支出の削減がありますが、政治家が選挙で負ける要因を自ら作り出すことになるため、政治的に好まれません。

したがって、政府は政策を実現するために、中央銀行に紙幣を刷ってもらうという対応になりがちです。これが行き過ぎると、金利の上昇、円安などの為替レートの悪化を招き、最終的に増税、公共支出の削減、さらなるインフレをもたらします。

インフレで持つべき資産・対策方法

ドイツのハイパーインフレからインフレから資産を防衛する方法を見ていきます。

ドイツは1918年から1923年にかけてハイパーインフレに見舞われました。1914年以前の物価水準が平均100とすると、1923年のピーク時の物価水準はなんと142兆9050億5544万7917まで上昇したというのだから驚きです。

ハイパーインフレ時は資産家の中でも貧困に陥った人がいましたが、大儲けできた人もいました。富んだ人はインフレに強い資産を持ち、適切な対応を取ったからです。

インフレに強い資産と対策方法を紹介します。

  • 株式:株式は変動リスクがありますが、インフレ、デフレにも強い資産です。アメリカでは1930年代のデフレ、1970年代のインフレでも株式投資は24.2%、4.2%の利益率をあげています。S&P500やオールカントリーなどのインデックスファンドに毎月積立投資することをおすすめします。
  • 実物資産:生活必需品、人気のある嗜好品はインフレでは価値が高騰します。食料、水、トイレットペーパー、カセットコンロとボンベなどは家庭で多めに備蓄しておくといいでしょう。ソーラーパネルを設置したり、菜園をしたりして、実物資産を生み出すのも良い対応です。
  • 借金:ハイパーインフレ下では紙幣の価値が急激に目減りするため、借り入れしても返済がただ同然になります。ドイツのインフレ王と呼ばれるフーゴー・ディーター・シュティンネスは外国通貨を担保にマルクの借り入れを行い、自ら創業した石炭関連業、運輸業で多数の設備投資、船を購入し、巨万の富を築き上げました。
  • 自己投資:ハイパーインフレのほとんどは自国通貨の大暴落が原因です。そのため、自国以外を相手に商売したり、海外の仕事を請け負ったりすれば、価値が安定している外貨を手に入れることができます。国際的に通用するビジネス、言語習得、プログラミングなどのスキルを身に付けておくことがインフレ対策になります。

不動産はインフレに強い資産ですが、貸家の場合は家賃をすぐに上げられなかったり、値上げ交渉に労力を費やしたりするので注意が必要です。ドイツでは家賃収入が急騰する修繕費用に追いつかずに大家が貧困に陥ったケースもあります。

自国通貨が暴落したときにはドルなどの外貨を持っておくといいですが、外国通貨に両替すると為替手数料などがかかります。自国通貨の為替レートを見つつ、インフレのサインや暴落の気配があれば検討しましょう。

まとめ:インフレ対策は資産運用や非常時の備えにつながる

インフレは「資金供給量」「供給状況」「人々の行動」に左右されるため、いつ、どれくらいの規模で発生するのかは明らかではありません。インフレが進行したと思ったら、制御不能に陥っているということも少なくありませんので、日頃から対策しておきましょう。

インフレ対策は資産配分、自己のスキルを考える良い機会にもなります。株式投資を始めたり、副業を始めたりといった人生をより良くする行動につながりますよ。株式投資や副業については以下の記事で紹介していますので、興味がある方はご覧ください。

私はS&P500インデックスファンドに投資したり、英語を学んだりしています。冷凍食品を多めに備蓄したいので、大きな冷蔵庫を買いたいんですよね。

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