大学生4人組がオンラインでメガネを販売し、メガネ業界に革命を起こしました。会社名は「ワービー・パーカー」といい、世界で最も革新的な企業として1位に選ばれており、メガネ業界のネットフリックスとも呼ばれています。企業のきっかけは創設者の1人が壊れたメガネを買い換えようとしたところ、とても高価なメガネの価格に手が出せない状況であったことを発端としています。
メガネ市場の8割を占めている巨大企業のルックスオティカは原価の10~20倍の価格でメガネを販売していた一方、ワービー・パーカーはその半額以下の価格で提供し、さらにメガネを1つ購入すると1つは貧しい人々に寄付されるという社会貢献のプログラムも実施しています。ワービーパーカーはメガネの高い価格に不満を感じていた人々から歓迎され、2010年に創業して5年後には評価額が30億円にもなっています。
ワービー・パーカーがこれほどの成功を収めた理由として、大学生であった創業者たちがすべてのリソースを集中投下して大きなリスクを取ったのではないかと思いますが、実はリスクヘッジを巧みにしていたからこそ成功しています。創業メンバーは大学をやめずに、授業に出席しながら空いた時間で事業を準備して、インターンシップにも参加し、卒業後の就職先の内定を確保しておくという用意周到ぶりです。
成功者は一か八かのリスクを取るというリスクテイカーというイメージがありますが、事実はその逆で失敗を考慮に入れたうえで対策するというリスク回避型ということが分かっています。起業や仕事に限らず、人生でもリスクの分散は重要で、予期せぬトラブルから身を守り、自分のやりたいことができます。リスク分散において役立つのが「人生のポートフォリオ」です。
今回は「人生のポートフォリオで成功を掴める理由、効果的な作成方法『プランC』」を紹介します。失敗におびえることなく、自分の好きなことや新しいことに自信を持って挑戦でき、成功率を上げることができます。
なぜ人生のポートフォリオが大切なのか
卵を1つのかごに盛るな。
この言葉は金融業界の格言で、卵を1つのカゴに盛った場合、そのカゴを落とすと全部の卵が割れてしまいます。しかし、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、1つのカゴを落としても他のカゴの卵は割れずに済みます。1つの商品だけに投資するのではなく、複数の商品に投資することで、リスクを分散させたポートフォリオを作りましょうということです。
ポートフォリオの考え方は金融業界だけでなく、人生全般にも言えます。人生でもポートフォリオを持つことで、トラブルがあっても挫折せずに、自分の望む道を歩むことができます。
ポートフォリオが大切な理由は、リスクヘッジせずに1つの道を漫然と突き進むと失敗したときに取返しがつかないからです。離婚リスクを考えずに結婚して仕事を辞める、失職リスクを考慮せずにスキルを磨かずに仕事をただこなす、などですね。離婚や失職したときには生計を一から立てなければなりませんし、待遇のいい仕事につくことは困難になります。
しかし、リスクを考慮してバックアッププランを用意しておくと、トラブルで絶望することはありません。すぐにプランを切り替えられますし、リスクにあまり怯えなくなります。1つの選択肢に固執しなくていいので、余裕を持って良い選択ができます。
ポートフォリオを作ることで人生における不確実性に対処しながら、より良く生きることができます。
「プランC」まで用意しよう
人生のポートフォリオを作るうえで、自分の大切なことはプランA、B、Cを用意しておきましょう。目的を達成するための計画として、プランAを本命とするならば、バックアッププランとしてプランB、Cを持っておくというイメージですね。
プランCまで用意する理由は物事を深く考え抜くことで、良いアイデアが思い浮かび、意思決定が上手くいくからです。オハイオ州立大学の研究によると、選択肢を2つまで検討した人は成功率が48%だったのに対して、選択肢を3つ以上検討した人は成功率が68%まで上がっていました。選択肢を2つだけにすると、考える時間が短くなり、表面的なアイデアになってしまうんですね。
プランA~Cは同時進行できるものにするのがおすすめです。すべてのプランを準備しておくことで、プランAがダメになってもすぐにプランBやCに切り替えることができます。
自分に大切なことはプランCまで用意しておきましょう。
安全域を設けることの4つの効果
バックアッププランを持つことは安全域(誤りの余地)を設けるともいい、不確実な世の中でも、自分のやりたいことをやりながら、安全に進むことができます。
安全域の設定は、「仕事をクビになったら、生活が成り立たない…」「恋人にフラれたら、一生独身になりそう…」といった不安が大幅に軽減されます。これにより、脳の容量を心配事に使わずに、良好な精神でいられます。
プランCまで用意して安全域を設けるメリットを紹介します。
- パフォーマンスが上がる:プランAが失敗したときの対応を事前に考えているので、目の前のことに集中でき、パフォーマンスが上がります。選択肢が3つだと深く考えるため、創造的なアイデアが思い浮かびますし、正しい判断をしやすくなります。選択肢を3つ考える過程で、既存の選択肢も具体的になるなど、アイデアの質も良くなります。
- 不安や心配が減る:会社を解雇される、恋人にフラれるなどをあまり恐れなくなります。相手からの評価や恋愛は努力することはできても、最終的には自分でコントロールできません。プランAがダメになっても、プランBとCにフォーカスするという心持で過ごせます。
- 自分らしくいられる:失敗しても大丈夫と思えるので、素直な思いを伝えたり、新しいアイデアや工夫を試したりできます。ありのままでいられることは健康、人間関係、人生の満足度にも良い影響があります。自分に正直な人ほど他人からの評価が高く、恋愛で良いパートナーに恵まれるなどの研究もあり、自分らしくいることのメリットには枚挙にいとまがありません。
- 自信がつく:「私ならできる」という自己効力感が高まり、自信がつきます。交渉の場面でも、複数の選択肢を用意しておくと、相手と対等な立場でお互いに納得する結論を出しやすくなります。一番最悪なのが選択肢が1つしかない場合で、相手に足元を見られたり、悪い条件を押し付けられたりします。いざという時のプランBとCがあることで、リスクを取れるようになります。
バックアッププランはメンタルに良いだけでなく、パフォーマンスが向上し、自分に正直に生きることができます。
バックアッププランの計画方法
プランCはどのような場面で使用すればいいか分からない方もいると思います。
本業をしながら、好きなことを仕事にしたいと思っている方のバックアッププランを紹介します。この例を参考にして、大切なことをプランCまで考えてみてください。
- プランA「本業」:本業を続けながら好きなことを追求します。本業で安定した収入を得るため、金銭的な心配をすることなく、好きなことに打ち込めます。ライフステージや好みに合わせて、昇進や転職で収入アップを狙ったり、休暇を取りやすい仕事や部署を選んだりといった、柔軟な対応が可能です。
- プランB「副業」:副業で好きなことをして収入を得ます。好きなことを本業にするには周囲の理解や経済的な収入面をクリアする必要がありますが、副業であればそのようなハードルはありませんし、本業のパフォーマンスを上げることができるという研究もあります。好きなことを副業にして稼ぐことは難しいので本業の大切さが実感できますし、好きなことで安全にお金を得ることができます。
- プランC「節約&投資」:節約と投資で経済的な余裕を持たせて、好きなことを追求します。収入を増やすのは大変ですが、節約するのは比較的簡単で、娯楽や外食などの支出が大きい人ほど効果があります。金銭的な蓄えが十分にあれば、本業でクビになっても冷静に対処できますし、むしろ好きなことができるチャンスと捉えられます。
本業で失敗しても対処できるので、自分なりの工夫で色々と試したり、率直な意見を言いやすくなり、仕事が楽しくなります。本業が好きになり、副業でも好きなことをするという、まさに一挙両得ですね。
まとめ:ポートフォリオは守りではなく、攻めの姿勢
バックアッププランで人生が楽しいものと感じるようになります。仕事仲間や恋人の反応を怯えながら過ごすよりは、自分らしくいて、ダメだったら他のプランに切り替えようと思っていたほうが楽しいですし、気楽に過ごせますよね。
失敗したときの保険を持つことで、自信を持って、リスクを取ることができます。リスクを取ることで、成功、自信につながりますし、何よりも自分で人生をコントロールしている感覚がありますよ。
バックアッププランは安全域を作ることにもつながります。安全域を作ることで変化の激しい時代に重要な「予測を不要にすること」ができます。安全域の利点や実践方法は以下の記事をご覧ください。