「人生楽しくない」
「パートナーとの関係が悪い」
こんな悩みを抱えていませんか?幸福や人間関係で苦しむ人は決して少なくありません。
ハーバード大学医学大学院教授であり、ハーバード成人発達研究の責任者のロバート・ウォールディンガー先生らの著書『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』から「良い人間関係を築き、幸福になる方法」を紹介します。ハーバード成人発達研究は同一家族の二世代にわたる被験者群を八〇年以上追跡調査してきた研究で、TEDの「人生を幸せにするのは何? 最も長期に渡る幸福の研究から」で有名で、著者は幸福研究の専門家です。
本記事を読めば、人間関係で大事にすべきポイントがわかり、パートナーや職場での人間関係が良くなりますよ。
幸福の二大因子
幸福になるには、何が重要な要素なのでしょうか?
2008年の研究では、80代の夫婦に8日間連続で電話をかけ、夫と妻のそれぞれに日常生活に関する様々な質問をしました。その日の体調や活動内容、他者とのつながり、周囲のサポートを得られるかなどを聞き取ったんですね。
その結果、人と一緒に過ごす時間が多かった日のほうが幸福度も高く、パートナーと過ごす時間が長い人ほどより幸福を感じていました。この傾向はすべての夫婦に当てはまっていましたが、特に仲が良い夫婦ほど幸福度がより高くなっていました。高齢者は健康問題に悩ませられることが多いですが、パートナーと仲が良い関係を築いている人ほど痛みや気分の落ち込みに苦しむことはありませんでした。
この研究から、幸福の二大因子は「人間関係の質と量」と言えます。
人間関係で大切なのは「共感する努力」
著者のロバート・ウォールディンガー先生は「相手を正しく理解する」「相手に好奇心を寄せる」のどちらが人間関係で大切なのかを調べるため、156組のカップルを対象とした実験を行いました。手順は、パートナーへの不満やいらだちを読み上げたものを録音した後、2人で録音を再生してもらい、「その出来事についてよく理解しようと努力してほしい」と伝えて、話し合ってもらいました。
次に話し合っているときの二人の気持ち、パートナーの意図や動機を尋ねて、自分への共感の態度がどれくらい感じられたかという質問をしました。その結果、「相手を正しく理解すること」はパートナーとの関係の満足度を向上させていましたが、それよりも「相手を共感する努力」のほうが人間関係の満足度を大きく向上させていたことが分かりました。 相手を理解しようと努力するだけでも、人間関係は大きく改善されるということです。
共感する姿勢を高めるために、人間関係では以下のように自問してみましょう。
- この人は今、どんな気分だろう?
- 何を考えているのだろう?
- 自分は何か見逃していないだろうか?
- 自分が相手の立場だったら、どう感じるだろうか?
相手に興味があり、理解しようと努めていることを伝えましょう。すると、相手も同じような姿勢を向けてくれるので、お互いに愛情や思いやりを持つことができ、ポジティブな人間関係になります。
人間関係を改善する3つの方法
相手に共感する努力が人付き合いで大事であることはお伝えしました。それでは、具体的に実践する方法を見ていきます。
共感する姿勢を見せるには、相手に十分な注意を向けましょう。人間関係は「あなたと良い関係を築きたい」というシグナルの積み重ねで決まります。相手に十分な注意を向けて、良いシグナルを発することで親密になることができます。
相手に注意を向ける3つの方法を紹介します。
- 感謝:人生を豊かにしている関係を思い浮かべて、感謝します。相手に今まで以上の注意を払い、感謝を伝える行動をしましょう。
- 変化を加える:日常の過ごし方にちょっとした変化を加えてみてください。相手がいるときはスマホを触らない、一緒に過ごす習慣を持つ、定期的に会うなどの人間関係を良くする工夫をします。
- 好奇心を持つ:相手に対して好奇心を忘れないようにしましょう。真摯な関心を寄せるようになれば、会話が盛り上がり、自分に対して興味を持ってくれるようになります。
相手に注意を配るということは尊重して敬意を払っていることを伝える行為です。これを意識するだけで人間関係が改善されます。
パートナーと仲良くする方法
長続きするカップルの特徴を調べるために、著者らは夫婦や同棲中のカップルを対象に「相手に対して腹が立った出来事」を8~10分間話してもらい、動画に記録しました。愛情や怒り、ユーモアなどの感情、相手の意見を認める、理解しようとするなどの行動を第三者がその動画を見て評価しました。5年後にカップルを追跡調査し、関係が継続しているかどうかを確かめました。
その結果、パートナーに対して愛情と共感を示したカップルほど長続きしていたことが分かりました。腹が立った出来事を話しているときでも、愛情をたくさん表現し、パートナーの気持ちに寄り添って理解しようと努めていたカップルほど関係が安定していました。
しかも、面白いことに動画を見て評価したのが、専門家であっても素人であっても関係が継続しているカップルを85%近い精度で予測できていました。愛情や共感があるかどうかは誰の目にも明らかということです。
パートナーと良好な関係を構築するには、愛情や共感を日頃から表現しましょう。
パートナーとの関係を良くするための3つの方法
パートナーと良い関係を保つには、基本的には人間関係を改善するテクニックと一緒です。ここでは、パートナーに対してより有効な方法を紹介します。
- 感謝日記:パートナーが自分にしてくれたことを振り返り、感謝の日記をつけましょう。人は相手にしてもらっていることを当然と思い、足りない部分に目を向けて不満を抱えがちです。ほんの些細なことでもいいので感謝することで、パートナーの優しさに気づきやすくなります。
- 新しい挑戦:いつものルーティンばかりをしていると、パートナーに注意をあまり向けなくなり、関係がマンネリ化してきます。散歩ルートを変える、行ったことのないお店や場所に行ってみるなどの新しい挑戦をしてみましょう。新しいことを定期的にすることで、パートナーに気遣いや愛情を示すことができます。
- WISERの実践:パートナーとの関係でネガティブな感情が込み上げてきたら、自分の心を冷静に観察しましょう。次に自分の感情を解釈し、「なぜこのような感情になったのか」「なぜこの問題は自分にとって重要なのか」などを自分に問いかけてみましょう。最後に上記のステップをパートナーの立場で考えてみます。必要があれば、解決策を考えて実行して振り返りましょう。この一連のステップがWISERで、自分と相手の感情を分析して対応策を講じることで、人間関係の問題を解消することができます。
相手の嫌な部分が目につく人は感謝日記、退屈を感じている人は新しい挑戦、喧嘩になりやすい人はWISERを使ってみましょう。日常的な雑談で仲を深めたい方は『自分を理解してくれる人を好きになる!相手とずっと仲良しでいる方法』をご覧ください。
まとめ:良い人間関係を築くと人生が楽しくなる
人間関係を良くするには、「相手に注意を向けること」が大切です。自分のことだけに時間を使うのではなく、相手を喜ばせたり、楽しませたりすることに時間を使ってみてください。
人は周囲の人から影響を受けやすいので、付き合う相手を選ぶことも人間関係で大切です。大規模研究なコホート研究であるフラミンガム研究では、友人が人生に満足していると自分の人生の満足度が向上することが分かっています。友人の行動なども自分に伝染するので、交流する相手は慎重に選びましょう。
良い人間関係には相手との相性も重要です。価値観が似ていると相性が良いと感じやすくなるので、「価値観の違いをすり合わせるとカップルの絆が深まる!幸せな関係を築く方法」を興味のある方は読んでみてください。
現代社会では人付き合いを完全に避けることはできません。人と過ごす際に「相手に注意を払う」「新しい挑戦」「感謝」を意識して実践してみてくださいね。人間関係が今よりも良くなるはずです。