「何かが足りない」
「悪い考えしか思い浮かばない」
これらの悩みを抱えていませんか。ネガティブな思考にハマると苦しいですし、生きづらく感じられますよね。
じっとしていると嫌な気分になってしまい、誰かとの予定を入れたり、何かを常にしたりする人は少なくありません。しかし、それでは心身が休まる時間がなく、疲労が限界に達したり、バーンアウト(燃え尽き症候群)になったりします。
これらを解決するには、気を紛らわすといったその場しのぎの手法ではなく、根本的な対処法が必要です。
それは「デフォルト瞑想」です。デフォルト瞑想は私が名づけたテクニックで、状況に応じて、集中瞑想、観察瞑想の2つを使って、日常生活を瞑想状態で過ごす方法です。
デフォルト瞑想で悩みや不安に支配される人生から解放されて、自由に生きることができます。心の平穏を手に入れたい方におすすめです。
思考対象をフィルタリングする
人間はどのことを考えるかを自由に選ぶことができます。瞑想で特定の対象に対して意識をオン・オフにする力を鍛えることができます。
瞑想には集中瞑想(フォーカスドアテンション)と観察瞑想(オープンモニタリング)の2種類があり、これら2つを使い分けると瞑想をいつでも実践できるようになります。デフォルト瞑想ではこの2つの瞑想法を日常で行っていきます。それぞれの瞑想について簡単に述べると下記のとおりです。
- 集中瞑想:仕事やスポーツなどの自分で決めた対象に意識を集中させる瞑想。集中しているときに、意識のオン・オフにする力を鍛えられる。
- 観察瞑想:頭に浮かんでくる思考を観察する瞑想。集中力を要しないときに、意識をオン・オフにする力を鍛えられる。
意識のオン・オフにする力が高まると、嫌なことが思い浮かんでも気にせずに仕事に集中したり、気持ちをスーっと鎮めたりできます。
昔から人生をより良く生きる秘訣として、コントロールできないものは放っておいて、コントロールできるものに集中するということが言われています。ストア派の重要な教えとして「コントロールの二分法」、アドラー心理学の著書『嫌われる勇気』で有名な「課題の分離」、世界的なベストセラーの自己啓発書『7つの習慣』の第1習慣の「影響の輪」でも、自分がコントロールできるものに集中させることの重要性が説かれています。
自分の意識を操る力は生きるうえで最も重要な能力といっても過言ではありません。デフォルト瞑想で意識を自由にオン・オフにする能力が手に入ります。
デフォルト瞑想で得られる3つのこと
禅僧の修行は座禅中だけではなく、作務と呼ばれる日常の労働作業も瞑想になっており、1日の生活のすべてを瞑想の一貫と捉えています。そのため、禅僧はデフォルト瞑想の実践者と言えます。
いつも瞑想状態でいると聞くと「疲れるのではないか?」と思う方もいらっしゃると思いますが、実際には心がさまようことがないため、疲れなくなり、晴れやかな気分で過ごすことができます。
デフォルト瞑想で得られる3つの利点を紹介していきます。
- 心の平穏によって幸せを得られる:瞑想によってネガティブな考えに囚われなくなり、心が穏やかになります。心の穏やかな状態を平静さといい、幸福感に深くかかわっていることがマサチューセッツ総合病院らの研究で判明しています。ゆっくり過ごすことが楽しくなりますので疲れを癒すことができますし、常に何かをしたり、誰かと一緒にいたりしなくても不安にならなくなります。
- 今この瞬間を楽しめる:幸せなひとときは深く味わい、勉強や仕事は雑念なしで集中する、嫌なことを考えずにのんびりと過ごす…デフォルト瞑想ではこのように過ごし方が可能になります。楽しいことは堪能して、不快なことに距離を置けるようになれば人生がより良いものに感じられるでしょう。瞑想では目の前のことに没頭している状態のフローに入りやすくなるという長庚大学の研究があります。フローで活動が楽しくなる、モチベーションが上がる、生産性が上がるといった報告もあります。
- 意識を自由にコントロールできる:瞑想経験を積むと、意識を自由にオン・オフにできることがハーバード・メディカル・スクールらの研究で分かっています。自分の望むことに対して意識をオンにして、望まないことに対して意識をオフにできます。人間は出来事そのものに対してではなく、出来事に対してのネガティブな思考を反芻することで苦しみを生み出しています。そのため、自らの意識をコントロールして、ネガティブな思考に囚われなくなれば、大半の苦しみから解放されます。
デフォルト瞑想で意識を自由にオン・オフにできるので、好きなものには意識をオフにして楽しむ、嫌なものには意識をオフにして対策を講じたり、考えずにいたりすることができます。平穏が得られて心が安定するため、結果的に幸福を感じるということですね。
デフォルト瞑想のやり方
デフォルト瞑想では集中瞑想(フォーカスドアテンション)と観察瞑想(オープンモニタリング)の2つを実践します。これらの瞑想のやり方は以下のとおりです。
- 集中瞑想:集中瞑想は特定の対象に意識を集中させる瞑想です。自分で決めた対象に意識を集中させ、他のことに意識が逸れたら、対象に再び意識を戻します。これを続けることで、意識をオンにし続ける力とオフにする力が高まります。対象は呼吸、仕事、スポーツなど好きに決めてもらって構いません。
- 観察瞑想:観察瞑想は頭に浮かんでくる思考を観察して自分から切り離す瞑想です。落ち込むような出来事を思い出して不愉快になっても、「嫌な出来事を考えているな」と思考をただ観察しているとすぐに落ち着いてきます。反対に不愉快な出来事に考え続けてしまうと反芻思考と言い、メンタルが落ち込む原因になります。自分の思考を観察するだけなので、座っているときや歩いているときなど集中力を要しない活動に向いています。
瞑想は意識をオン・オフにするだけでなく、自分に関するネガティブな考えを減らす効果があることが京都大学の研究で明らかになっています。自分に執着しなくなるので、周囲との人間関係も上手く生きやすくなりますし、理想の自分にも囚われにくくなるため、生きやすくなります。
デフォルト瞑想を実践するには、集中力をあまり使わない活動には観察瞑想、集中力を要する活動には集中瞑想をしましょう。通常時は観察瞑想で、何かに取り組むときは集中瞑想をするということです。観察瞑想と集中瞑想の詳しいやり方については、以下の記事で紹介していますのでご覧ください。
まとめ:幸せとは自らが生み出す苦しみからの解放
ネガティブな思考への執着が苦しみを生み出します。瞑想で思考へのオン・オフが意識的にできるようになれば、不必要な苦しみから解放されて、人生を楽しむ余裕が生まれます。
人生は「意識をどこに向けるか」の積み重ねです。他人の意見や変えられないことに意識を向けていると、「どうにもならないことをひたすら考え続けている」人になるだけです。こんな人は魅力的だと思えませんよね。
反対に、自分を向上させようと頑張っている人、誰かの助けになるために行動している人は魅力的に思えますよね。自分にとって、より良いことに意識を向けるか、悪いことに意識を向けるかの差で人生は変わります。観察瞑想・集中瞑想を日常で実践して、自分が望むことに意識を向けて、望まないことは意識を距離を取ってみましょう。