イライラが止まらない
気分よく過ごしたい
このような悩みの原因は、感情のコントロール方法を知らないことかもしれません。多くの人は感情をコントロールできないものと考えがちですが、感情は様々な方法でコントロールできます。
今回は『「感情」は最強の武器である: 「情動的知能」という生存戦略』から私自身の知識も交えて、「感情の役割、上手にコントロールする3つの方法」を紹介します。ネガティブな感情をコントロールして、毎日を気分よく過ごす方法を知ることができますよ。
反射的反応と精神的反応のパワー
無意識に起こる反応のことを、「反射的反応」と呼びます。反射的反応は刺激から反射に至るまで次の3つを満たすものを言います。
（1）特定の出来事や状況によって引き起こされる
（2）特定の振る舞いが生じる
（3）刺激が与えられるとほぼ毎回起こる
反射的反応には身体的、精神的の2種類があります。身体的反射は、熱いものに手を触れるとひっこめたり、ボールが飛んできたら目を閉じたりする反応のことです。精神的反射は、相手に親切にされたら親切でお返ししたり、見た目が良いものに好印象を抱いたりする反応です。
反射的反応は基本的な生物反応であり、反応が事前に予測でき、自動的に反応し、反応を抑えることはとても難しいという特徴があります。反射的反応はシンプルなルールで単純な環境では十分な力を発揮しますが、複雑な環境になると対応しきれなくなるという弱点があります。
人は周囲の過酷な環境に対応するため、反射的反応よりも柔軟で強力かつ高度なシステムを身に付けました。それは「感情」です。
感情とは反応よりも柔軟かつ強力なシステム
感情は不必要なものとされ、その利点はあまり認識されていませんでした。しかし、感情が人をよりレベルの高い思考、行動に導いていることが分かっています。
人は感情のおかげで周囲や自分の状態に応じて、適切な行動をしたり、先延ばししたりすることができます。感情がもたらす柔軟性によって、幅広い思考、行動が手に入るようになりました。
反射反応では、目の前に食べ物があれば見た目や匂いが悪くても食べるという自動的な反応を引き起こします。一方で、感情では、目の前の食べ物に異変を感じれば、不快な思いを呼び起こします。すると、脳は不快な感情と空腹感や周辺の食料事情などの複数の要素を考慮して、より合理的な反応をします。
脳は感情をベースにしつつ、理性的な思考を取り入れることで、判断や行動を効果的に行っています。感情は私たち人間にとって、なくてはならないものなんですね。
「コア・アフェクト」──身体状態は思考や感情に影響を及ぼす
私たちの体にはコア・アフェクトと呼ばれる身体の調子から気分の良し悪しとその強度を決めるセンサーが備わっています。コア・アフェクトの状態によって気分が左右されるため、思考や感情に大きな影響を及ぼします。
ポジティブなコア・アフェクトの場合、気分が良くなり、物事が順調に感じられます。一方、ネガティブなコア・アフェクトだと、気分が悪くなり、体から警報を発していることが感じられます。
コア・アフェクトは体内の状態を主に反映しますが、物理環境からも影響を受けます。物理環境とは映画の悲しいシーン、お笑いや入浴などですね。
ポジティブなコア・アフェクトにするためには、運動や睡眠、食事などで体を健康に保つ、美味しいものを食べる、好きなことをすることで思考や感情もポジティブになります。反対に空腹感、疲労感、嫌なことがあれば、ネガティブなコア・アフェクトになり、思考や感情もネガティブになるんですね。
日々を気分よく過ごしたいという方は、コア・アフェクトを良好に保つように意識してみてください。
ポジティブな感情、ネガティブな感情は何のためにある？
ポジティブな感情は視野を広げてリスクを取るように促し、ネガティブな感情は自らの考え方を変化させて適応を促すという役割があります。ポジティブな感情、ネガティブな感情にも様々な種類があり、それぞれ独自の効果を持っています。
ポジティブな感情には喜び、自尊心、畏敬、愛情、楽しみ、感謝、熱意、好奇心、安らぎ、快楽などがあります。喜びには想像力を向上させ、新しい情報を受け入れて、柔軟な思考ができます。好奇心は新しい情報や経験を広げて探求したいという欲求を生み出し、将来や現在の課題を解決するのに役立ちます。
ネガティブな感情は怒り、悲しみ、罪、恥、不安、恐怖、孤独などがあります。ある研究では、学生に市場データを与えた上で、半数には音楽を流して楽しい気持ち、残りは悲しい気持ちへと誘導して、外貨取引のシミュレーションをしてもらいました。その結果、悲しい気持ちになった学生は楽しい気持ちの学生に比べて判断が正確で、多くの利益を上げました。悲しい気持ちには注意深くしてくれる効果があるということですね。怒りは交渉を有利に進めたり、ゲームのパフォーマンスが向上したりといったメリットがあります。
ポジティブな感情のレベルを高めるにはポジティブなコア・エフェクトに加えて、感謝、自然、好きな人との付き合いをしましょう。ネガティブな感情はその感情自体をネガティブだと捉えるのではなく、ポジティブな効果に注目することで恩恵を受けることができます。
感情をコントロールする3つの方法
感情には多くのメリットがありますが、感情のままに振舞うと目標の達成を阻んだり、人間関係を壊したりするというデメリットもあります。人によっては特定の場面でネガティブな感情が強く出てしまい、困っている方もいるでしょう。
感情をコントロールする術を身に付けておくと、私生活や仕事の場面などで何かと役立つます。感情を制御するのが上手い人は、感情を上手く制御できない人に比べて、心臓発作を起こす確率が低くなったり、幸福度が高くて、人生に満足し、良好な人間関係を築けることが分かっています。
感情をコントロールする3つの方法を紹介します。
- 受容
- 再評価
- 表現
それぞれについて説明していきますね。
１、受容──物事を受け入れる
受容とは、自分でコントロールできないことに対して感情的に反応せずにただ受け入れることです。
パートナーとの喧嘩、仕事のミスなど嫌な出来事があったときに、「別れないか不安だ」「自分はなんて馬鹿なんだ」とクヨクヨと悩み続けても意味がありません。受容は嫌な出来事をありのままに受け止めることで、どのように今後行動するかに目を向けることができます。受容の態度で感情的な痛みを和らげることができます。
アイルランド国立大学の研究で、学生を集めて単純な絵合わせゲームをやってもらい、ときどきゲームを中断して、次の2つのどちらかを選ばせました。
- ゲームを続ける代わりに痛い電気ショックを受ける
- 最後まで終えずに途中でゲームをやめるか
電気ショックは徐々に強くして、継続時間も長くしていきました。学生を次の2つのグループに分けて、半数には電気ショックを耐えるには楽しい場面を思い浮かべてください、残りには受容の訓練として電気ショックが強くなっても抵抗せずに痛みに耐えつづけられますと伝えました。
その結果、受容の訓練を受けたグループのほうがゲームを長く続けることでき、強さを増す電気ショックに耐える時間が長くなりました。
ネガティブな感情になったら、抗うのではなく、ありのまま感情をただ受け入れて前向きに行動しましょう。
２、再評価──考え方を変える
仕事でミスをしてしまったとき、自分を責めるのではなく、「失敗で成長できた」「たくさん挑戦していたらミスもある」とポジティブに考えることで、ネガティブな感情を軽減させることができます。このようにネガティブな出来事に対する考え方をポジティブに変えることを再評価と言います。
米陸軍ナティック兵士システムセンター（NSSC）の認知科学チームによる研究では、トレッドミルで90分間へとへとになるまで走ってもらい、ネガティブな感情へのアドバイスについて2つのグループにランダムに振り分けました。
- どこかのビーチに寝そべっているのをイメージするといった気を逸らすグループ
- 運動が心臓に与えるメリットや走った後の満足感を思い浮かべるという認知的再評価をするグループ
結果は、気を逸らす方法に効果ありませんでしたが、認知的再評価グループでは苦労と不快感は減っていました。認知的再評価はスポーツや仕事のパフォーマンスを上げたり、楽しい生活を送ったりすることができます。
再評価はリアプレイザルとも言い、下記の記事で詳しいやり方を紹介しています。興味がある方は見ていってくださいね。
３、表現──アウトプットする
ネガティブな感情を日記やメモにありのままに書いて表現することで鎮めることができます。
多くの人は好ましくない感情や思考を表に出すと強まってしまうと考えていますが、むしろネガティブな感情を表現することで軽減することが分かっています。
自分の思考や感情を言語化することを「感情ラベリング」と言います。感情ラベリングには様々な効果があり、辛い出来事への悲しみ、恐怖や不安が弱まったり、感情や行動をコントロールする前頭前皮質の活動が高まってストレスやネガティブな感情に関連する扁桃核の活動が弱まったりすることが判明しています。
感情ラベリングする際は自分の深い感情や思考を掘り下げると効果的です。友人や大切な人、同じような経験をした人に話すことでも嫌な気分が和らぎますよ。
まとめ：すべての感情は自分を助けてくれるためにある
感情は魂の言語だ。
ニール・ドラルド・ウォルシュ『神との対話』
何かについて、自分にとっての真実を知りたいと思ったときには、自分がどう感じるかを探ってみればいい。
感情というものは、なかなか見つからない。自覚するのはさらにむずかしい。
だが、最も深い感情のなかに、最も高い真実が隠されている。
要はこの感情をつかむことだ。
感情をコントロールするには、時間的・精神的な余裕を持って、自らの思考や感情を「観察」することが重要です。自分自身の感情や思考を書き出すエクスプレッシブライティングがおすすめです。詳しいやり方については以下の記事を参考にしてください。
私は感情コントロール法として、マインドフルネスで「受容」、エクスプレッシブライティングやブログで「表現」をしています。また、仕事のやりすぎでネガティブなコア・アフェクトになっていたので、運動や休息を増やしてみたところ、以前よりもポジティブな感情で過ごせるようになりました。
感情をコントロールするためのおすすめ本
Ｃｈａｔｔｅｒ（チャッター）―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための２６の方法
・Ｃｈａｔｔｅｒ（チャッター）―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための２６の方法
こちらの本は脳内のネガティブな声であるチャッターと距離を取る方法を教えてくれます。
心の声の仕組みと対処法の様々なテクニックを知ることができます。
ネガティブな思考や感情にお悩みの方におすすめな本ですよ。
「感情」は最強の武器である: 「情動的知能」という生存戦略
・「感情」は最強の武器である: 「情動的知能」という生存戦略
この本を読めば、感情の役割、機能、コントロールする方法が分かります。
感情の持つパワーを知ると、優れた判断力を発揮でき、毎日をポジティブに過ごすことができます。
人の行動や思考に関わる感情は生活にとって欠かせないものなので、すべての人のおすすめです。
感情をコントロールするためのおすすめ体験
THE TRIP
・THE TRIP
THE TRIPは、大きなスクリーンのデジタル映像に合わせて、楽しみながら自転車を漕ぐワークアウトです。
デジタル映像は豊富な種類があり、都市、ジャングル、未来都市などの非日常空間を迫力のある音楽とともに走り抜けるという新体験です。
様々な場所を本当に走っているかのような爽快感があって、パリピ感もなく、暗闇フィットネスをやったことのない方におすすめです。
上野や川崎のジェクサーのジムのスタジオプログラムなどで体験することができますよ。
インサイド・ヘッド
・インサイド・ヘッド
ライリーという人間の少女の頭の中に住む「ヨロコビ（喜び）」「カナシミ（悲しみ）」「イカリ（怒り）」「ムカムカ（嫌悪）」「ビビリ（恐れ）」の5つの「感情」を描いたピクサーのアニメーションです。
これらの感情がライリーを幸せにするために、主人公の「ヨロコビ」を筆頭に頑張ります。
映画の内容も面白く、「人の感情」「悲しみはいらない感情なのか」を知ることができます。家族みんなで見るといいですよ。