以前に「不況時の「社会保護政策vs緊縮財政」、どっちがいいのか?という問題」という記事を紹介しました。
日本政府の財政収支が赤字という話題になると「政府債務が1200兆円を超えた!」、「国民1人あたりの借金にすると〜万円」などと言われています。
確かに一般家計の視点から見れば、借金が膨大になると返済できなくなるでしょう。
しかし、今回紹介するMMT理論では、
「日本政府はお金をいくらでも刷ることができるから、家計と同じような考え方するのはナンセンス」だと言っています。
結論から申し上げますと、
- 政府が政策を決めるときに考慮すべきは、財政収支ではなく、過剰なインフレである!
となります。
今回は2020年にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の経済学教授のステファニー・ケルトンさんが執筆した「財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生」を紹介します。
まず、MMT理論から説明します。
MMT理論とは、
政府は主権通貨の「発行者」であるため、政府債務ではなくインフレ率に基づいて財政運営すべき。
政府は、不景気時の財政支援策、社会保障費をいくらでも必要なだけ支出できるため、必要な資金がなくなることはなく、資金を調達するために国民に徴税、あるいは誰かからお金を借りる必要はない。
その気になれば、政府は一瞬で債務を返済することもできる。
※政府は、自国で通貨を発行している国の政府
MMT理論で覚えていただきたいのは、次の3点です。
1、政府はお金をいくらでも創造できる
2、政府が財政赤字となっているとき、非政府部門(個人、企業など)は黒字(貯蓄、資産など)になっている
※政府の財政収支+非政府部門の財政収支=0になるため。一方が赤字なら、一方が黒字になる。政府が黒字なら、非政府部門は赤字になる。
3、政府の財政支出上の制約となるのは、財政赤字ではなく、インフレである。
制約をインフレにすれば、赤字を気にすることなく、住民の生活向上に必要な政策にさらに財政支出できる。
※インフレは、インフレ圧力、実体資源に注意する必要がある
MMT理論の主張では、
- 政府は今まで財政収支(特に財政赤字)ばかり気にしてきたが、どうやって必要な資源、サービスを確保するかという考えに変えなければならない
- 実物資源には限りがあるので、住民に十分なサービス、持続的な資源の提供をできるように政策を実施する
- 政府支出の制約はインフレという発想に転換できれば、財政赤字になるという理由で医療、年金などのサービスを削減することなく、適切な政策を実施し、国民の生活を向上させることができる。
ということになります。
MMT理論をまとめると、
・政府政策の真の制約は、財政赤字ではなく、実体経済の資源とインフレ圧力である
・以上を理解することで、パラダイムシフト(劇的な発想の転換)が起こる
です。
MMT理論は、賛否両論あります。
日本の政府債務、政策を考える上での多様な視点の一部として知っていただけたらと思います。
今回、この記事を読んで、政府はお金をいくらでも創造できるなら、なぜ税金、国債はあるのか等の疑問やもっと詳細なことを知りたいと思った方は、「財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生」をお読みください。
経済について知ることで騙されにくくなります。マネーリテラシーとして、何でもいいのでお金についての本を読んでみましょう
おすすめの本
財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生