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無知からの脱却!無知の知を高めて、本当に賢い人になる方法

2023年9月3日

現代における賢さとは何だろう?と考えたことはありませんか。実は自分の中にたくさんの知識を蓄えている人よりも、他人の知識までも上手く活用できる人が本当の賢さを持っているのです。

認知科学を専門にしているブラウン大学教授のスローマン先生らの『知ってるつもり――無知の科学』から「人はどれだけ無知なのか?その対策方法」を紹介します。この本の内容は専門的で少し難しいですが、人間だけが持つ知性の強み、知識の錯覚、正しく判断する方法を解説してくれるので、とても勉強になりました。

無知の原因を知って対処することで、今よりも賢い人になることができますよ。

人間の真の賢さは集団的頭脳にある

人の脳はコンピューターと違い、大量の情報を保持するようにできていません。人の知性は、問題解決に役立つ情報だけを取り出すように進化してきました。そのため、私たちの脳内には、ごくわずかな情報しか保存されていません。

人間の強みは個体ごとの知識量は少なくても、集団の広大な知識のネットワークを利用できることです。現在はインターネットで世界中の人の知識にアクセスできるため、人類全体の問題解決能力は他の生物種にはない大きな強みとなっています。

集団的頭脳は集団で引き起こされるのであり、特定の個人によるものではありません。知っているつもりになっている人は集団的頭脳による恩恵を自分の知識だと思うことで引き起こされることが少なくありません。

知識の錯覚:人は知っているつもりになる

物事の仕組みへの人々の理解はきわめて浅く、不完全なものであることは以前の研究から明らかになっていました。そして、人は自分の知識を過剰に見積もる傾向があります。

個人が実際に持っている知識量と、持っていると思い込んでいる知識量を比較するための実験をコーネル大学が行っています。実験内容は、参加者に物事の仕組みを詳しく説明してもらい、理解度に対する評価がどのように変化するのかを確認する、というものです。手順は以下になります。

  1. ファスナーの仕組みをどれだけ理解しているか、7段階評価で答えてください。
  2. ファスナーはどのような仕組みで動くのか、できるだけ詳細に説明してください。
  3. もう一度、ファスナーの仕組みをどれだけ理解しているか、7段階評価で答えてください。

参加者は2つ目の質問に対してほとんど答えられず、ファスナーの理解度について1つ目の質問から3つ目の質問で自己評価を1~2段階引き下げたとのこと。つまり、2つ目の質問でファスナーの仕組みをよく知らないことに気づき、3つ目の質問で1つ目の回答時点では知っているつもりだったことを認めています。

実際に持っている知識量は自分が思っていたほど持ち合わせていなかったという現象は、「知識の錯覚」と呼ばれています。速度計、ピアノの鍵盤、水洗トイレ、シリンダー錠、ヘリコプター、ミシンなどについても同じ結果で知識の錯覚があったことが分かっています。

人は物事について、自分の知識量を実際の知識量よりも高く見積もるという傾向を持っています。

集団意識の強みと弱み

人々が知識の錯覚に囚われてしまう原因は、集団的頭脳による知識を自分個人の知識だと勘違いするからです。

多くの知識を自分で持っていると思っていますが、その大部分はテクノロジー、環境や他者から得ています。人は自分の知識量を、必要な知識がどこにあるかを知っているかどうかで判断しています。インターネットや他者の中にある知識も自分のものと認識しているんですね。

テキサス大学の研究によると、参加者がインターネット検索を利用したところ、自らの情報を記憶して処理するといった認知的な能力を過大評価することが分かっています。しかも、自分の知らない事実をネット検索で見つけた場合でも、「もともと知っていた」と答えることが多かったとのこと。

知識の錯覚にハマってしまうと、自分に知識がないことに気が付きません。なぜなら、十分に物事を知っていると思っているからです。この錯覚によって自分の無知を自覚することができず、誤った考えに固執してしまい、個人や社会の大きな問題を引き起こしてしまいます。

知識の錯覚を打ち砕く

知識の錯覚は、根拠のない頑固な意見を持つことを可能にします。「男性は一家の大黒柱になるべき」「女性は男性を支えなければいけない」などのような考えは、自分だけではなく、他人にも不幸をもたらします。どのようにしたら、この錯覚を破ることができるのでしょうか?

それは、「因果関係や物事の仕組みを詳しく説明すること」です。自分ではなく、相手の場合は物事の仕組みに関して詳しい説明を求めるといいでしょう。

政策に対する説明を求めるだけで極端な意見が和らぐということがハーバード大学らの研究で明らかになっています。参加者への実験手順は以下のとおり。

  1. 2012の実験当時に注目されていた様々な政策について「強く賛成する」から「強く反対する」まで7段階で評価し、自らの理解度も答えてもらう
    例)アメリカ全土で一律課税を導入する 、イランに制裁を科す、社会保障制度上の退職年齢を引き上げる、国民皆保険制度を導入する、教師に能力給を導入するなど
  2. 政策を実施した場合の影響をできるだけ詳しく説明をしてもらう
  3. 再度、政策に対して7段階で評価し、理解度への回答を求める

その結果、2回目に理解度を尋ねたときに自らの評価を下げており、政策への意見も中立的になったことが分かっています。説明を求めることで、相手の意見を変えることができるわけですね。

もちろん、自分でも物事を詳しく説明することで知識の錯覚を避けることができます。

賢い人になる方法

無知の錯覚を破るには詳しい説明が有効だと述べました。賢い人になるために、他にも役立つ方法があるので紹介します。

  • ナッジ:ナッジとは行動科学でより良い選択を促す手法のことで、健康的な食事をさせるために目立つ場所や近い場所にスナックではなくサラダを置く、臓器提供ドナーを増やすためにデフォルトでドナーにして、ドナーになりたくない人は免許証の裏側にチェックするといった事例が有名です。ナッジはシンプルで実践が簡単なものにすると正しい行動が身に付きやすくなります。実生活では、給与支給と同時に貯蓄口座にお金が移動するようにする、自分の集中力を削ぐものは視界に入れないように片づけておくといった具合ですね。
  • ジャスト・イン・タイム学習:ジャスト・イン・タイム学習は必要な時に必要な知識を学んで実践することです。当たり前ですが、知識は学ぶだけでも身に付きませんので、実践⇨フィードバックのループが学習の近道です。新しい分野を学ぶときは入門書や漫画などの簡単なものから入ると、物事の理解が早くなり、モチベーションが上がります。
  • 理解度の確認:日記をつけたり、知識を発信したりすることで自分の理解度をチェックしましょう。物事を説明することは知識の錯覚にハマるのを防いでくれます。自分の知識は不完全だと認識していることで、日頃から情報収集したり、他人の意見に耳を傾けたりするようになります。

まとめ:無知の錯覚を避けて、集団的頭脳に貢献しよう

無知の錯覚に陥らないためには、自分は何でも知っているという態度ではなく、自らの知識について常に謙虚である姿勢が求められます。自分は知っていると思い込んでいると勉強するモチベーションが激しく下がるため、成長が止まります。一方、自分にはまだ知らないことがあるという知的謙遜の態度でいると勉強へのやる気が高まり、自然と学習するようになります。

人の真の強みは集団的頭脳と述べました。無知であることを自覚するという「無知の知」を高めて、知識やスキルを発信することで一個人であっても集団的頭脳に貢献することができます。

知識の錯覚を対処するには、物事の仕組みを分かりやすく教えることを習慣にするといいでしょう。私自身も実践していますが、YouTubeや音声メディア、ブログなどはおすすめですよ。

賢くなるためのおすすめ本

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代」で有名なペンシルベニア大学の心理学者のアダム・グラント先生の本です。
再考する力を身につけるために、バイアスを打ち破り、どのように学び続ければいいのかを教えてくれます。
成長しつづけたい人におすすめの本ですよ。

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学
この本の著者二人は認知科学者で、無知とその対処法について教えてくれます。
他にも人間の知性とは何か、知識の錯覚の恐ろしさ、賢い判断をする方法を知ることができます。
人生で後悔することが多い、間違った選択をしがちという方はぜひ読んでみてください。

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