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生け花の専門家が教える「観葉植物を美しく健やかに育てる方法」

2023年8月9日

「観葉植物を購入しても枯らしてしまう」
「植物の育て方が分からない」

これらのお悩みを解決します。観葉植物を長く健やかに育てるのは中々難しいですよね。

園芸家、華道家でもあり、植物専門店「REN」代表の川原氏の著書『ケアプランツ』から「観葉植物を健やかに美しく育てる方法」を科学的な知識を交えて紹介します。観葉植物の本は難解で図鑑みたいなものが多いんですが、こちらの本は観葉植物の育て方をシンプルかつイラストなどで分かりやすく説明してくれています。

本記事を読めば、植物を元気に育てる方法、美観を良くする方法を知ることができます。

観葉植物のメリット

人は自然から様々な恩恵を受けています。人類は元々、自然の中で生活しており、自然の中にいるとリラックスできるので、結果的に体や心の健康につながるのです。観葉植物を自宅や部屋に置くだけでも、自然の恩恵を得ることができます。

観葉植物は次のような効果があります。

職場に置くだけで従業員の活力と幸福度と生産性がアップ
ストレスが軽減し、血圧を改善させる
ポジティブな感情が増加し、ネガティブな感情と身体的不快感が減少した

これらの効果は観葉植物に関するものだけですが、観葉植物に限らない自然の効果はガンや脳卒中を減らしたり、集中力やワーキングメモリ(作業記憶)などの認知能力を向上させたり、ストレスや疲労を素早く回復させたりするというポジティブな作用もあります。

理想的な環境の3つの要素

自然界の「当たり前」を鉢植えで再現することがプランツケアの基本です。植物の自生地である 生まれ育った環境に近づけてあげることが大切です。 亜熱帯育ちの観葉植物にとって、理想的な環境は「明るい室内の、 風通しの良い、暖かい場所」です。

植物も人間と同じように、環境の良し悪しによって健康状態が大きく変化します。しかし、難しく考える必要はなく、植物にとっての良い環境は人間が感じる快・不快とほとんど同じです。

人間の理想の屋内環境とは「温度18度以上28度以下」「湿度40%以上70%以下」なので、この基準が満たされた環境は観葉植物にとっても心地よいものとなります。観葉植物のケアの最も基本となる3つの要素は、日光・通気・温度です。 それぞれ気をつけるべき点を挙げておきます。

  1. 日光:日光は光合成に不可欠であるため、自然光を浴びる環境が必須です。多くの観葉植物は弱い光を好むため、強い日差しが当たる場所ではなく、「自然光で読書ができる」程度の柔らかな光が当たる場所に置きます。自然光がないときは、植物育成用LEDライトを使用しましょう。
  2. 通気:植物は部屋の隅や棚の中などの通気性が悪い場所ではなく、風通しの良い場所に置きましょう。「風」によって新鮮な空気とともに光合成に必要な二酸化炭素が運ばれてきます。通気が悪いとカビが発生したり、光合成ができなくなったりするので注意してくださ。通気性が悪い場所では、サーキュレータを使用して強い風ではなく、弱い風を当てます。
  3. 温度:観葉植物にとっての最適温度は20~25度で、暑過ぎず寒過ぎない温度を好みます。 植物にエアコンの直風はNGなので、風向きを調整する、位置を移動するといったように工夫してください。

これらを踏まえると、窓がないトイレ、高温多湿のお風呂場では観葉植物の育成が難しいことが分かります。通気性は見落としがちなので、植物が枯れてしまうと悩んでいる方は空気の通りが良いかを確認してみてください。

観葉植物の多くは急激な環境の変化を嫌うため、頻繁に位置を変えないようにしましょう。植物が弱っているときなどの例外的な状況を除いて、日光浴をさせるために鉢を移動することは植物への強いストレスになるのでやめたほうがいいです。

「良い土壤」の条件

植物の生活基盤となるのが「土壌」です。土壌は微生物の活動によって多種多様な生物が育まれるため、土壌そのものが「生態系」となっています。これからの説明では、園芸のための土壌は 「用土」、岩石が風化したものを「土」 と表現します。

園芸店などで購入した観葉植物はプラスチック鉢に植えてあり、必要最低限の「土」しか用いられていません。土地には植物の成長に必要な栄養分などがなく、植物の成長にリミッターがかかっている状態です。プラ鉢には通気性や水はけが悪いと問題もあるため、素焼き鉢に植え替えるとともに良質な土壌となる「用土」を使いましょう。

良い用土の条件は①団粒構造、②微生物、③腐植です。それぞれ見ていきましょう。

  • 団粒構造:団粒構造とは様々な土の粒が混ざって適度な大きさの団子状になり、大小の隙間がたくさんある構造です。保水性、排水性、通気性に優れ、土壌がフカフカになり、根の張りや植物の育成にも良い影響を及ぼします。 一方で、砂などの細かい粒で固まっている単粒構造だと、土壌はカチカチに硬くなりがちです。購入した観葉植物の土が単粒構造なら植え替えを検討しましょう。
  • 微生物:1gの土壌には1億個の数万種の微生物がいると言われおり、植物にとって土壌微生物は欠かすことのできないパートナーです。植物は微生物と助け合っており、微生物に糖分を供給する代わりに養分や水分をもらっています。多様性に富んだ土壌微生物が活性化することで、植物は健康に成長できます。
  • 腐植:腐植とは生きていない土壌有機物(動植物)のことで、微生物の餌となり、植物に栄養を供給することができます。ただし、腐植が多ければ多いほど良い土壌というわけではなく、育てる植物にあった適正なバランスを維持してください。腐植がある土は虫などを招いてしまうため、嫌われがちですが、植物の健康には欠かせないものとなっています。表面の土を苔などで覆うというマルチングをすることで虫などを見えないようにしてあげましょう。

水やりの適切なタイミング

水やりは「水やり三年」と言われるほど、奥がとても深く、一人前になるには3年くらいかかると言われています。水を与えるという行為には、植物の根に水と新鮮な空気を供給する重要な役割があります。水やりのタイミングは「用土がしっかり乾燥してから」です。

数多くの植物の健康診断をしてきた筆者によると、植物の不調を招いた原因の圧倒的な1位は水の与え過ぎとのこと。植物の根は用土の中で呼吸しているので、土がずっと濡れていると、窒息してしまい、根腐れを引き起こします。また、常に用土が湿潤状態だと、根は伸びようとしなくなります。

用土が乾燥したら、鉢の容積の4分の1程度の水を与えてください。この分量だと、用土に水がしっかり行き渡って空気が循環し、鉢底穴からも水が流れ出ないちょうどいい量となります。ちなみに、鉢皿に水が溜まると根の呼吸が阻害されてしまいます。植物は根から吸い上げた水分を使って日中に光合成をしますので、午前中に水やりをするのが理想です。

水やりでありがちなミスは、用土の内部はまだ湿っているのに、表面が乾いただけで水を与えてしまうことです。鉢全体の重みで乾き具合を判断する方法もありますが、初心者にはハードルが高いでしょう。水やりのタイミングで悩む人は植物用の「水分計」を使用してみてください。用土に挿しておくだけで、水を与える適切なタイミングを色の変化で知らせてくれますよ。慣れてくれば、水やりのタイミングも感覚的に分かるようになってきます。

病気を予防するセルフケアの仕方

植物の健康を維持するためには、セルフケアが欠かせません。セルフケアで植物の状態を良好に保ち、病気や虫などのトラブルを未然に防ぐことができます。以下の5つを習慣にしてください。

  • 葉水:多くの植物は葉からも水を吸収して幹や枝が潤うことで、新芽や気根も出やすくなります。 自然の植物は雨で保湿されますが、屋内で保湿するには人間の手が必要不可欠です。時間帯は日中が理想で、できれば毎日、霧吹きで葉水を行いましょう。水温は室温同様に20~25度が望ましいです。葉水には防虫効果もあります。
  • 葉磨き:植物の葉にもホコリが溜まるので、週に1回、葉を磨いて除去しましょう。葉磨きをすることで植物が活き活きとして鑑賞価値が高まり、光合成の妨げ、害虫の住処、カビの発生を防ぐことができます。 多くの害虫は葉の裏側に潜むので、ティッシュを濡らして葉の両面を拭き取りましょう。布巾など繰り返し使用すると病害虫の伝染を媒介する恐れがあるので、ホコリを掃除したら毎回使い捨ててください。
  • 葉透かし:葉が密集して繁っているときは、不要な葉や枝を付け根から切り落とすことで光が均等に当たり、風通しが良くなります。また、邪魔な枝を剪定することで美観を良くすることができます。時期はいつでも大丈夫なので、葉透かしや剪定で適切な量をキープしましょう。
  • 枯落とし:枯れてしまった葉や枝を放置しておくと、病害虫の発生原因となります。見つけたら、躊躇なく切り落としましょう。葉が黄色くなることは自然な生理現象で植物の不調ではありません。注意すべきなのは、新しい芽や葉の黄変です。不調のサインですので、対面やネットでの植物の健康診断を受けることも検討してください。
  • 転回: 植物全体に日光を当てるため、月に1回は植物の向きを変えましょう。植物の通気性を改善し、バランスの良い樹形に育てることができます。位置の移動はストレスになりますが、転回はいくら行っても問題ありません。長時間転回させないと、落葉し、樹形が極端に傾いてしまいます。

植え替えの時期とやり方

植え替えに適切な時期として、一般的に春~秋の暖かい季節が推奨されています。しかし、著者によると観葉植物は年間通して問題なく植え替え可能とのこと。健やかに植物が成長するための植え替えが必要なタイミングは次の3点になります。

  • 用土の劣化 :鉢内の用土は経年劣化するため、団粒構造が崩れ、腐植が枯渇し、土壌微生物が減ってしまい、土壌環境が悪化していきます。用土を健全に保つための植え替え周期は、環境や管理方法によって異なりますが、2~5年が目安です。
  • 根詰まり:根詰まりとは、鉢の中に根が充満した状態です。鉢の底から根が出る、新芽が育たない、葉先から枯れる、などの症状は根詰まりの兆候です。不要な根を切り落とすか、大きな鉢への植え替えが必要となります。観葉植物の根を切るときは細心の注意を払いましょう。
  • 株の成長:植物が大きく成長し過ぎて鉢とのバランスが取れなくなったら、植え替えをします。植物を大きくしたくない場合は剪定で解決できることがあります。サンセベリアやポトスなどの地下茎で増殖する草物系植物は株分けで増やすことができます。

植え替えは、「根極め」という著者独自の植え替え手法を紹介します。根極めは、少量の土を入れたらゆすりながら指で押し固めて隙間の余分な空気を抜き、また少量の土を足しては押し固めを繰り返すという方法です。排水性と通気性を高めるために、鉢のそこには最初に軽石を敷いてから用土を足していきます。根を傷つけないように慎重に行いましょう。

まとめ:観葉植物も人や動物と同じようにケアが大切

観葉植物も人と同じように居心地の良い環境(日光、通気、温度)、栄養分(土壌、水)を欲しています。観葉植物を育てる際には、まずは環境、栄養の状態を整えましょう。本書では美しい樹形にするための剪定方法も紹介していますので、気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

植物は動物と異なり、不調が分かりにくいので注意深く観察して、ケアしてあげることが大切です。著者が経営している観葉植物の専門店「REN」ではネットや持ち込みでの健康診断をやっているので専門家の意見を聞くのも有効ですよ。私の家には観葉植物が1株しかないので、もっと増やしてみるかな…

観葉植物の育て方のおすすめ本

プランツケア
こちらの本は観葉植物の基本の育て方、美しい見た目にする方法、植物と人との関わり方まで幅広く教えてくれます。
著者は園芸家、華道家、植物専門店「REN」の代表であり、植物への愛をとても感じる文章で、植物のケア方法をとても分かりやすく説明してくれています。
観葉植物を育ててみたい、いつも枯らしてしまうという方におすすめの本です。

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