知識を検索

Life

生産性を追求しすぎると不幸になる──効率化の罠

2024年9月3日

生産性をいくら高めても幸せになれない
自分の人生はいつまでも理想とは言えない

このような悩みを抱えていませんか。仕事やプライベートで必死で努力しても報われない、幸福を感じられないと辛いですよね。

生産性や理想をただ追い求めるだけでは本当の幸せは手に入れられません。むしろ、効率化のテクニックで生産的になればなるほど、仕事が増えていき、ストレスが増大します。

本当の幸せを得るには、時間の有限性を受け入れ、今できる最善の行動をすることです。未来の自分のためではなく、今の自分の幸せにために生きることが大切です。

今回は、「偽の幸福ではなく、真の幸福を手に入れる方法」を『限りある時間の使い方』より紹介します。人生の効率化、理想といった偽の幸福を目指さずに、人生の有限性を現実として受け止めて、幸せに過ごすことができます。

すべてをやろうとすると失敗する

よくあるタイムマネジメント本には、「効率化のテクニックを使えば、1日に処理できるタスクが増える。そうすれば、やることリストは片づき、安らかに過ごせる」と書いてあります。やることを全て終わらせようとするアプローチの問題点は、絶対に実行不可能であるということです。

1日に詰め込めるタスクの量を増やしても、すべてをこなすことはできません。「仕事の量は、完成のために利用可能な時間をすべて満たすまで膨張する」という有名なパーキンソンの法則があり、これは仕事をどんなに早く終わらせても、追加の仕事が際限なく降ってくることを意味します。残念なことに、タスクの量が勝手に膨らんでいくという現象は、仕事以外にも当てはまります。

タスクの処理能力をいくら高めたところで、ゴールはなく、やることが増えるだけという「効率化の罠」に陥ってしまいます。私生活でも、人は旅行、運動、勉強などを空いた時間にどんどん詰め込もうとします。1日の中にタスクを無理矢理詰め込むと、すべてがストレスフルな活動に感じられて疲弊するという結果になります。

効率化の罠への対処法は、「もっと効率的にやれば忙しさから逃れられる」という希望をあえて捨てることです。「効率的にやれば全部できる」という幻想を手放して、本当に大切なことだけに集中してください。

有限性に目を向けると、現在が貴重な時間になる

「もしも人生が永遠に続くと考えるなら、自分の命が貴重だとは思わないだろうし、自分の時間を大切に使いたいという思いもなくなるはずだ」

マーティン・ヘグルンド『この人生(This Life)』

人は、いつ訪れるか分からない死に向かって、抗うこともできずに進んでいきます。多くの人は、無限の時間があるかのように無意識に日々を過ごしていますが、実際には限られた時間しか与えられていません。私たちは、選択肢の中から一つを選ぶたびに、他の選択肢を必然的に犠牲にしなくてはならない、厳しい制約の中で生きています。

限りある人生を生きるということは、絶え間なく可能性に別れを告げることです。多くの人が直面しないようにしている有限性を認めることで、自分にとって本当に大事なものを選び取ることができます。

有限であることを認めると、今この一瞬一瞬がいかに貴重であるかに気づきます。子どもの頃に家族や親戚と過ごした夏休みの時間が特別であるのは、それが永遠に続かないからです。私たちや家族、親戚がいつまでも生きられるわけではなく、どれだけの時間を共に過ごせるかも分かりません。もしこの時間が無限に続くなら、その特別な価値は失われてしまうでしょう。

時間の使い方を工夫すれば、あらゆることができると思っている人は、時間は無限にあると信じているようなものです。有限性を自覚しないと時間を軽視することになり、自分にとって大切なことに時間を使えなくなります。

理想を求めてはいけない──我々は決断するしかない

空想の中では、現実の制約はなく、すべてが完璧で無限の可能性があります。想像の世界では、理想のパートナーと過ごし、仕事で大成功を収めながら、家事や育児もこなし、さらにスポーツや趣味も存分に楽しむといった、あらゆる願望がすべて達成可能です。

しかし、実際に何かをやろうとすると他の活動ができなくなるという、トレードオフの問題にぶつかります。現実のあらゆる選択は、できるかもしれなかった無数の生き方を失うことになります。空想上はすべてが完璧ですが、現実世界は不完全で何をするにも犠牲がつきまといます。

現代人の多くは完璧主義者・優柔不断であり、空想の中の無限の可能性を消したくなくて、結論を出すことから逃げています。理想を追い求めて、パートナー選び、結婚や子育ての決断を先延ばしにする行為は、一種の妥協です。オンラインで出会いを求めたり、決断を保留したりすることに長い時間を費やすことは、停滞している状況に甘んじているからです。

良いタイムマネジメントとは、限りある人生という現実を受け入れて、大切なものを選択して、何を捨てるのかを決めることです。反対に、悪いタイムマネジメントは人生の有限性から目をそらして、空想の中で生きることです。

人生のあらゆる瞬間は最後の瞬間である

人は時間をコントロールすることはできません。今、この瞬間を生きることしかできないからです。

私たちは、1時間後、1年後、10年後といった未来の時間があるかのように振る舞いますが、これは錯覚です。未来の自分が生きているかどうか、どんな状況にいるかは全く分からないのです。

人生は一瞬の時間の連続であり、過去や未来は存在せず、あるのは今この瞬間だけです。人生のあらゆる瞬間は最後の瞬間であるという事実を受け入れると、人生が儚く、貴重な経験の連続であると理解できます。

時間を有効活用することに夢中になると、現在の生活を将来の幸福のための手段としか考えられなくなります。将来の利益のために人生を道具化しない人たちは、活動そのものを楽しみ、現在の喜びを充分に味わうことができます。

まとめ:有限性は幸せをもたらす

人は有限性の価値を低く見積もりがちです。これまでの研究によると、多くの選択肢や選び直しが選択の満足度を下げ、制約や後戻りできない選択の方が選択の満足度を上げることが分かっています。

これらはパートナー、仕事選びにも言えます。目の前の相手や仕事に深くコミットすることなく、理想のパートナーや仕事を探していては深い喜びは得られません。人間関係や専門分野のスキルの深さが人生の充実に大きく関わってくるんですね。

今この瞬間を味わうにはマインドフルネスが有効です。プロカウンセラーのおすすめの手法を以下にまとめていますので、興味のある方はお読みください。

-Life