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距離感が知的謙遜を育む!自分の考えを客観的に見るコツ

当ブログでは知的謙遜のメリットをこれまでも紹介してきました。知的謙遜とは自分がどれだけ知らないかを知っていることで、自分への過信を食い止めたり再考する力を高めて正確な事実を見極めたりすることができることが分かっています。
過去記事で「再考のメリットと実践法」についてを紹介していますので、参考にしてください。

知的謙遜はGoogleの採用でも重要視している能力で、知識の移り変わりが激しい現代で必要な能力なんですね。そこで今回は、「距離を置くことで知的謙遜が高められるぞ!」というミシガン大学らの研究を紹介します。この論文では実験が2つありますので、それぞれ説明していきますね。

実験1では、卒業後の就職が決まっていない57名ミシガン大学の大学4年生と新卒者が対象で、12ドルと引き換えに研究に参加してもらっています。参加者のツライ問題に対して、距離を取ることが賢明な推論にどのような影響を与えるかを調べています。手順は以下のとおり。

  1. 現在の米国の不況や失業率の上昇などが書かれているそれぞれのカードの山札から1枚を選ぶように参加者に指示
  2. "現在の経済情勢があなた個人にどのような影響を与えるか、数分かけて考えてください "と伝える
  3. 参加者を没入型視点(まるでその場にいるかのように目の前で展開する出来事を想像する)、距離を置いた視点(まるで遠い観察者になったように展開する出来事を想像する)のどちらかで考えてもらうようにランダムに割り振る
  4. 不景気が自分のキャリア見通しにどう影響するかをインタビュアーに対して声を出して説明してもらう

参加者は実験前と自分の将来について推論した直後に、現在の気分を1(非常に不幸)から9(非常に幸せ)の尺度で評価してもらいました。参加者の回答は録音、録画され、弁証法的思考と知的謙虚さについて、研究者が評価しました。

その結果、

  • すべての参加者は、自分の将来について推論した後、幸福感が減ったと報告した
  • 距離を置いたグループの参加者は、自分の知識の限界を認識する傾向が有意に高く、未来が変わりそうだと認識する傾向が有意に高かった

となります。第三者の視点で問題を見ると、冷静に思考する力がつき、知的謙遜の能力が向上するんですね。視点を変えるだけというのは中々手軽で良いですね。

実験2では、2008年の米国大統領選挙前の3週間、リベラル派と保守派の傾向が強い米国市民の参加者54名です。実験の詳細は次のようになります。

  1. 参加者の支持しない候補者が当選した場合、今後4年間で様々な外交・国内問題がどのように展開するかを、没入型視点、距離を置いた視点のどちらかで考えるようにランダムで割り振る
  2. その問題についてインタビュアーの前で説明
  3. 実験終了後に、政治問題について非公式に議論する超党派のグループに参加したいかどうかを回答する

全体的に実験1と似ていますね。ちなみに、没入型の視点では米国人の視点で問題を考え、距離を置いた視点ではアイスランド人の視点から問題を考えるように指示していました。超党派は、政党の枠組みを超えて共通の目標に向けて話し会うグループのことです。

その結果は、

  • 参加者は、実験後により多くの苦痛を感じたと報告した
  • 研究1と同様に、距離を置いた参加者は、未来が変わりそうだと予測する傾向が強く、自分の知識の限界を認める傾向が強かった
  • 距離を置くグループの参加者は、実験後に自分の政治的見解をあまり強く支持せず、研究終了時に超党派政治問題討論グループへの参加を表明した割合は、没頭した参加者より高かった
  • 賢明な推論は、多様な視点に対する開放性と相関していた

とのこと。視点から距離を置くだけで自分の信条が変わり、行動までも変わるなんて驚きですよね。

研究者曰く、

近年、知恵に関する研究は飛躍的に増加していますが、その多くは知恵の定義や、知恵が生涯にわたってどのように変化するかを検証することに重点が置かれています。しかし、知恵を生み出す基本的な心理的メカニズムを明らかにすることは、これまであまり行われてきませんでした。今回の研究結果は、まさにこの問題を解決するものです。その結果、個人的に意味のある問題を推論しているときに「距離を置く」人は、賢い方法で考え、行動していることがわかった。また、比較的簡単な操作で、賢明な推論と行動の変化が観察されたことは注目に値する。このことは、日常生活で賢明な推論をするために多大な労力を必要としない可能性を示唆しています。

だそう。一歩引いた視点は知恵のある思考、行動をもたらすということですね。かなりお手軽でいいんじゃないでしょうか。

何か問題にぶつかったときは第三者から視点から考えてみるといいですね。視野が広くなり、思いもよらぬ解決策が思い浮かぶかもしれません。

知的謙遜に関するおすすめ本
THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代」で有名なペンシルベニア大学の心理学者のアダム・グラント先生の本です。
再考する力を身につけるために、バイアスを打ち破り、どのように学び続ければいいのかを教えてくれます。
成長しつづけたい全ての人におすすめの本ですよ。

人はどこまで合理的か
こちらは合理的に考える手法を教えてくれます。
合理的な思考を妨げるバイアスも教えてくれるので、客観的で正しい情報を推論したい、伝えたいという方は読んでみるといいですよ。

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