現代はメンタルの不調を抱えている人が数多くいます。
このような社会で生き抜くには、
- ストレスに強い
- メンタルが強い
ことは大きな強みとなります。これら2つに頭が良いを兼ね備えた人はまさに生きていくうえで最強です。
どんなに成功したとしても、不安やストレスに悩まされてメンタルが悪化した状態では嫌ですよね。どのような環境でもストレスを感じにくく、強いメンタルを持っている人は理想的です。
今回は、スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセン氏の著書『運動脳』から「運動がストレスに強くし、メンタルを強くする理由」を紹介します。アンデシュ・ハンセン氏はスマホの悪影響を説いた『スマホ脳』で有名な方ですね。
運動で体、メンタルともに強くなり、頭が良い魅力的な人になれますよ。運動のメリットを知ることで、モチベーションも上げることができます。運動で集中力、認知機能を高めることや、1日の運動時間、運動方法も説明します。
慢性ストレスは頭を鈍らせる
プレゼン、嫌な職場などのストレス・不安を引き起こすものがあると偏桃体から警報が出され、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。コルチゾールの血中濃度が上がると、心拍数が増加して、集中力が高まり、神経が過敏になります。
偏桃体は偏桃体のストレス反応を引き起こすアクセルだとすると、海馬、前頭葉は偏桃体のストレス反応を抑えるブレーキです。プレゼン、スポーツなどで一時的にストレス状態になるのであればパフォーマンスを高めるので好ましい反応ですが、ストレス状態が慢性化すると海馬、前頭葉が萎縮してブレーキが効かなくなってくるという重大な問題が起こります。
海馬は記憶や空間認識に関わっている領域なので、ストレスでダメージを受けると言葉がうまく出てこなかったり、場所の認識ができなくなったりします。前頭葉は衝動を抑えたり、抽象的思考や分析的思考をしたりする高次認知機能を司っている領域のため、ダメージがあると感情が暴走したり、理性を失ったりしたような行動に出やすくなります。
しかも、偏桃体はストレスの警報を発するだけでなく、ストレス反応によって刺激を受ける特徴がありますので、ブレーキが機能しなくなるとストレスがストレスを生むという悪循環に陥ってしまいます。
運動でストレスをコントロール
ランニング、サイクリングなどの運動をしている間、肉体に負荷がかかるためにストレス反応を引き起こし、コルチゾールの分泌量が増えます。
筋肉を動かすためには、多くのエネルギーや酸素が必要なので、血流を増やそうとして心臓の鼓動は激しくなり、心拍数と血圧が上昇します。しかし、運動が終われば、身体はもうストレス反応を必要としないので、コルチゾールの分泌量は減り、さらにランニングを始める前のレベルにまで下がっていく。この場合のコルチゾールの働きは正常な反応です。
ランニングを習慣づけると、走っているときのコルチゾールの分泌量は次第に増えにくくなり、走り終えたときに下がる量は逆に増えていくようになります。 そして、特筆すべきなのは運動以外のストレスでも、身体が運動によって鍛えられるにしたがってコルチゾールの分泌量が抑えられることです。
チリやフィンランドの研究により、週に2回以上運動をしている人は自信や幸福度が向上し、ストレス、不安が大幅に緩和されることが分かっています。運動は気分を良くするだけでなく、ストレスに対する抵抗力を高めてくれるのです。
ストレスを火種から消す
GABAは、ストレス反応で活性化した脳の活動を鎮めてストレス感覚を消すという脳細胞の興奮を抑える役割を持つアミノ酸です。すばやく効果的にストレスを和らげてくれるGABAは体を動かすことによっても活発化します。
体を定期的に動かすことで、主に大脳皮質下でGABAの働きが促進されることが分かっています。大脳皮質がストレスを生み出す源ですので、 運動がストレスの源を直接作用するということです。
運動は他にも以下のようにストレスを減らす作用があります。
- GABA作動性ニューロンの産生:運動によって「GABA作動性ニューロン」が生み出され、このニューロンは他のニューロンを鎮めるという働きがあります。「GABA作動性ニューロン」のおかげで、運動した後に気持ちが穏やかになり、ストレスや不安に強くなるんですね。
- ストレス無害化物質の産生:筋肉の中にはストレスで生じる「キヌレニン」を無害化する物質があります。筋トレで筋肉を増やせば、ストレスの影響をほとんど受けない体にすることができます。
ストレス対策として、運動を日常に取り入れるなら、有酸素運動で心拍数が大幅に高まるランニングやサイクリング、筋トレを組み合わせることがおすすめです。もちろん、ウォーキングでもそれなりの効果が見込めます。
モチベーションを高めて、うつを減らす
セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンは神経伝達物質と呼ばれる脳内の物質で、細胞から細胞へと信号を伝えています。これらの物質が私たちの感情、集中力、モチベーションなどの様々なことに影響を及ぼしています。 うつ病は、この3つの神経伝達物質の欠乏と密接に関わっていると考えられ、抗うつ剤による薬物療法の多くは、これらの物質を増やすものになっています。
それぞれの神経伝達物質の主な役割は以下のとおりになります。
- セロトニン:セロトニンには鎮静作用があり、脳の活動を調整している。興奮した脳細胞を鎮めて脳全体の活動を抑制し、悩みや不安を和らげる。また心を落ち着かせ、冷静な判断や強い精神力をも促す。そのためセロトニンが欠乏すると、機嫌が悪くなったり、不安になったりする。
- ノルアドレナリン:ノルアドレナリンは、やる気や注意深さ、集中力を促す。これが足りないと疲労を覚えたり気持ちが滅入ったりするが、逆に多すぎると、興奮したり過活動になったり、落ち着きを失ったりする。
- ドーパミン:ドーパミンは脳の報酬系で中心的な役割を果たし、意欲や活力を促す作用があり、幸福感、快感、学習、集中力、意思決定にも関わっています。ドーパミンが足りないと無関心、無感動、やる気の低下につながります。
これら3つの神経伝達物質は運動で増やすことができ、その効果は数時間持続します。習慣的に運動すれば、分泌される量も増えていき、効果も1日続くようになります。
運動は抗うつ剤と同じような効果があり、うつ病の再発率は抗うつ剤よりも少なく、効き目も長いことが数多くの研究で明らかになっています。しかも、運動には気持ちが晴れやかになるというおまけ付きです。
最強の脳物質「BDNF」を生み出す
運動で心拍数を上げると「BDNF」という脳内最強の物質が分泌されます。
BDNFの効果は、
- ニューロン(神経細胞)の発生や成長、維持、再生を促す
- ニューロンのつながりを強化して、学習や記憶の力を高める
- 精神が安定して、不安に強くなる
などがあり、脳に素晴らしい効果を与えてくれます。
BDNFの効果を得るには「インターバル・トレーニング」がおすすめです。インターバル・トレーニングは「60秒激しく動いて60秒休む」を1セットとして10回繰り返すようなワークアウトで、短時間の間に激しく動くことで心拍数を効果的に上げることができ、長時間の有酸素運動と同じような効果を短時間で得られることができます。
運動を続けるほどBDNFの生成量が増やすことができますので、習慣化することが大切ですよ。
運動で頭が良くなる理由とメリット
運動で頭が良くなる理由は、以下のとおりです。
- 脳が大きくなる
- ニューロンが増える
- 脳のつながりがスムーズになる
頭の良さに特に大事なのが脳のつながりがスムーズになることです。ピアノで簡単な曲を弾くだけでも、後頭葉の一次視覚野(鍵盤を見る)⇨運動皮質(手と指を動かす)⇨側頭葉と頭頂葉にある連合野(音の情報を処理する)⇨前頭葉(意識と高次脳機能をつかさどる)と様々な脳領域を使う必要があります。運動で脳領域の連携を速くすることができます。
脳の力を最大限に活用するには、脳のニューロンがしっかりと連携できていることがマストです。
その他の運動の頭が良くなるメリットとしては、
- 集中力が増す:ドーパミンは周囲の話し声などの外部の雑音、脳内の雑音のボリュームを下げて、目の前のことに集中させる効果があります。運動直後にはドーパミンの分泌量が増えるだけでなく、脳内で意思決定をする前頭葉を強化して自制心を向上させることができます。
- 記憶力を高める:運動は記憶の司令塔とも呼ばれる海馬を大きくします。短期記憶、長期記憶が向上し、加齢による海馬の萎縮を止めるだけでなく、成長させます。記憶力は勉強だけでなく、テニスやピアノなどの運動性記憶も意味するので、特定のスキルを高める前に運動してみましょう。
- 学力を高める:小学校の生徒を対象にした研究では、毎日体育の授業を組み込んだグループと週2回体育の授業を組み込んだグループでは、毎日体育をしたグループは体育はもちろん算数、国語、英語でより高い成績を取ったことが分かっています。たった4分の運動でも認知能力を高めることができます。
があります。
おすすめの運動法
運動の効果を得るには、日常の活動量を少し増やすだけでも効果があります。
高い効果を欲しいなら、ランニングやスポーツなどの心拍数を増やす運動を週3回30~45分以上を目安に行ってみましょう。余裕がある人は有酸素運動に加えて、週2~3回の筋トレを追加してみましょう。
私は有酸素運動、筋トレになる「飛ばないバーピー」を毎日の朝と夜にやっています。現在は、1分運動、30秒休憩を1セットとするインターバル・トレーニング形式で朝に10分、夜に20分ほどしています。詳しいやり方については、以下の記事をお読みください。
まとめ:運動はメンタル、脳に効く
運動は脳がベストなパフォーマンスを出せるように最適化させてくれます。そのため、ストレス、不安、モチベーション、頭が良くなるなどの効果が出てくるんですね。
運動は健康効果もありますし、燃え尽き症候群を減らすことも分かっていますので、日常に取り入れることで生活の質を確実に高めることができます。早歩き、散歩などのちょっとした運動でも効果がありますので、少し時間が空いた時にやってみるといいかもしれません。
運動がつまらないと感じている人はジムなどで楽しいと思える運動を探してみるといいですよ。ちなみに私はジムのサイクリングプログラムで「THE TRIP」を楽しんでいます。THE TRIPはニュージーランドに本拠地とするレズミルズ・インターナショナルという会社が提供するプログラムでして、世界中で大人気のグループエクササイズです。興味がある方はやってみてくださいね。
運動のおすすめ本
脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方
・脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方
こちらの本は、著者が運動の科学的な効果を熱意を持って教えてくれます。
豊富な事例で運動の様々なメリット、やり方を説明してくれるので、運動のモチベーションが上がります。
運動は心身の健康に欠かせないので、すべての人に読んでいただきたい本です。
運動脳
・運動脳
この本は運動の効果を分かりやすく説明してくれています。
運動でメンタルや頭が良くなる理由を詳しく知ることができます。
気分が落ち込みがち、運動で頭を良くしたいと考えている人におすすめの本です。
運動のおすすめ体験
THE TRIP
THE TRIPは、大きなスクリーンのデジタル映像に合わせて、楽しみながら自転車を漕ぐワークアウトです。
デジタル映像は豊富な種類があり、都市、ジャングル、未来都市などの非日常空間を迫力のある音楽とともに走り抜けるという新体験です。
大きなスクリーンで都市や自然などの映像を見ながら、サイクリングしていると気分爽快ですし、音楽で気分を盛り上げてくれるので、初心者にもおすすめです。
THE TRIPの魅力については以下の記事で紹介しています。興味のある方はご覧ください。
バーピー
バーピーは筋トレ、有酸素運動の両方をすることができる全身エクササイズです。
「バーピー」とは、直立⇨腕立て伏せの姿勢⇨立ち上がる流れでジャンプをするという動きを繰り返します。
最後のジャンプをしないで背伸びをすると、飛ばないバーピージャンプになり、大きな音が出ないのでマンションでもやりやすいです。