何だかいつも疲れている感じている方は少なくないと思います。慢性的な疲労対策に役立つのが、「認知リソースの理論」です。認知リソースとは、意志力やウィルパワーなどとも言われ、認知的な作業をする際に必要なリソースの総量です。ゲームで魔法を使うと消費するMP(マジックポイント)のようなものです。キャラクターのMPが尽きると魔法が使えなくなってしまいますよね。
カルフォニア大学教授のグロリア・マーク先生著書『Attention Span』では、認知リソースの概念と有効な活用方法を分かりやすく解説してくれていました。マーク先生は注意力やマルチタスクの研究で有名なんですよ。そこで今回は、
- 認知リソースの概念とは?
- マルチタスクの弊害
- 中断をコントロールする方法
を紹介します。認知リソースの概念を知ることで、疲れにくく、精神的な余裕がある生活を送ることができます。
私は認知リソースを浪費させる活動を習慣にしていたため、常に疲労を感じていました。認知リソースを多く消費する活動をやめて、休息を上手に取ることができるようになりましたよ。
認知リソースは限られている
認知リソースとは、脳には日常生活で使用する注意力や認知力のリソースが蓄積されているという概念です。これらの資源は利用可能な注意の量、脳を使うと消費するエネルギーと考えることができます。
注意力、集中力が必要な作業、情報処理、意思決定をすると認知リソースは消耗していき、その量には限りがあります。使い切ると、疲労を感じたり、ミスしたり、衝動的になったりして、仕事や私生活にも悪影響を及ぼします。また、認知的負荷の高いタスクほど認知リソースの消耗量が多いことが明らかになっています。
認知リソースの存在は数々の実験から明らかになっており、6・8・4・2・3…と次々に数字を読み上げて最新の3つの数を覚えるという難易度の高いタスクを6時間以上続けてもらったところ、簡単なタスクを続けたグループよりも、衝動的になり、多い金額の遅延報酬よりも少ない即時報酬のほうを選びました。その他にも、被験者にスクリーン上の不規則な文字列から、例えば特定の「M」という文字を探してもらったところ時間が経過するにつれてパフォーマンスが低下したとのこと。
消耗した認知リソースは、睡眠、リラックス、自然とのふれあいで回復させることができます。適度な睡眠時間、タスク間の休憩が大切なんですね。疲れてきたなと思ったら、休息を入れて、認知リソースを補充させましょう。
認知リソースが消耗しているとパフォーマンスが下がるだけでなく、ストレスや精神的疲労を感じるようになります。認知リソースの量を意識すると、良好な状態で高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
マルチタスクはなぜ悪いのか?
人はマルチタスクをすることができず、シングルタスクしかできません。スマホをいじりながら会話することはできませんし、会議で討論しながら議事録を取ることはできません。頭を働かせるような作業を同時に行うことはできないということですね。
ですが、マルチタスクで仕事をこなしているように見える人がいるのも事実です。実際のところ、マルチタスクは高速でタスクを切り替えているだけに過ぎません。電話しながらメールを返信している人は、電話⇨メール⇨電話…といったように短い時間で意識を電話とメールに素早くスイッチしているんですね。もちろん、メールに集中しているときは電話の内容をほとんど理解できていません。
マルチタスクが悪とされるのは、意識を切り替えの作業に膨大な認知リソースを使うからです。電話とメールを同時にこなそうとすると、電話で会話のいままでの流れを思い出してから適切な返答をし、メールの文面を見て前後の文脈を認知したうえで返事を書いて、また電話で…と意識を切り替えるときには今までのやりとりを思い出さなければいけない分、認知リソースを浪費してしまうんですね。
マルチタスクの弊害は多くの研究で明らかにされており、生産性が下がり、ミスを多くするようになり、知覚ストレスも高くなることが分かっています。また、マルチタスクは前のタスクの注意力が残り、現在のタスクに支障をきたすという「注意の残留物」と呼ばれる現象も確認されています。認知リソースを温存しつつパフォーマンスを上げるために、シングルタスクを徹底しましょう。
外部からの中断をコントロールする
マルチタスクで意識を切り替えるときに認知リソースを無駄遣いすることは先ほど述べました。実は中断も多くの認知コストがかかってしまいます。
中断もパフォーマンスが落ちる要因となりますが、マルチタスクとの違いは中断を完全になくすことはできないという点です。仕事中にかかってくる電話や上司から話しかけられたときに無視することは難しいですよね。厄介なことに、中断された仕事は思考の中で残り続けてしまい、認知リソースをダダ漏れにすることです。
中断による悪影響を減らすためのテクニックは以下のとおりになります。
- 自分で中断のタイミングを決める:スマホの通知をオフにしてチェックする時間を決める、一区切りついた時点で要件を聞くと伝えるなどの対応をします。自分のタイミングで中断時期を決めるとパフォーマンスが良くなります。タスク完了後のタイミングだと「注意の残留物」を減らせるのでおすすめです。
- 中断する前に未完了のタスクを書き出す:未完了のタスクを書き出すことで、やり残したタスクを覚える必要がなくなるので、認知リソースを浪費させずに済みます。また、中断に対処したあとに、いちいち思い出す必要もないのですぐに作業を再開することができます。ベイラ―大学の研究によると、被験者に未完了のタスクを寝る前に書き出させたところ、書き出さないグループに比べて眠りに落ちるのが早かったとのこと。
中断をコントロールする手法は仕事・私生活でかなり役立つので、試してみてくださいね。私はどちらも実践していますよ。
まとめ:認知リソースでパフォーマンスを挙げて、心身を良好に保ちやすくなる
認知リソースの残量を意識することで、一日の行動の指針となります。もし慢性的な疲労を感じているなら、認知リソースが不足していると判断し、仕事時間を減らしたり、休息や睡眠時間を増やしたりすることができます。
『Attention Span』では、他にもポジティブな感情がレジリエンスを高めたり、現代の映画やテレビなどが認知リソースを消耗させている背景などの役立つ知識を紹介しています。自分の認知リソースを効率的に運用する方法を知りたい方は本書をぜひ読んでみてください。
私は認知リソースを意識してから慢性的な疲労や目の痛みを感じることがなくなりました。認知リソースは燃え尽き症候群になりそうな方にもおすすめの知識ですよ。
認知リソースのおすすめ本
Attention Span
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こちらの本は認知リソースについて、分かりやすく解説してくれています。
認知リソースは脳を使うと消費するエネルギーの総量のことで、少なくなると仕事のパフォーマンス、セルフコントロールに悪影響を及ぼし、ストレスを感じやすくなります。
何だか疲れやすいという方におすすめの本です。
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