「何をやっても自分はダメダメ」
「みんなに嫌われるんじゃないか心配」
このようにネガティブな心の声が止まらなくなることはありませんか。
ネガティブな思考や感情を止めるために、有効なテクニックがあります。
それは、「距離を取ること」です。
ミシガン大学の心理学部教授であり、ホワイトハウスの政策会議にも出席している経歴を持つイーサン・クロス先生の著書の『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』では、ネガティブな心の声をコントロールする方法を解説してくれていて、これは役に立つと思ったので紹介します。
今回は「ネガティブな心の声の仕組みと軽減するテクニック」をお伝えします。
私は辛い思考や感情と距離を取るテクニックを日常的に使っています。嫌なことをずっと考えたりせずに、目の前の大切なことに集中できるようになりますよ。
私たちはみな「内なる声」を発している
現代ではマインドフルネスが急速に広まりつつありますが、私たちの体は「今を生きる」ようにはできていません。
人が覚醒している時間の3分の1から2分の1は自分の「内なる声」に支配されています。私たちはいとも簡単に「今この瞬間」から離れて、未来、過去の出来事などの考えごとに耽ります。この傾向は人間の基本的な性質であるため、「初期状態(デフォルト)」という名前で呼ばれています。
内なる声は問題を解決するときに思考を働かせるのに役立ちます。試験の成績が悪かったり、仕事で失敗したりしたときに、原因を分析して対策を立ててくれるのです。自己制御や目標達成にも役立ち、私たちは毎日、内なる声に頼ることで様々な恩恵を得ています。
内なる声の特徴は圧倒的な速度です。私たちの内面の独り言のスピードは、声に出して1分間に4000語を発するのに匹敵します。ウースター大学の研究によると、被験者が文章問題の回答を黙ったまま言語化する速度は、声に出すよりも11倍も早かったとのこと。内なる声は思考スピードを上げるという大切な機能もあるんですね。
内なる声が害となるのは、ストレスや怒り、不安や心配などのネガティブな思考や感情を延々と考え続けてしまうという「チャッター」になったときです。内なる声を制御できなくなり、チャッターが心を支配するようになるとき、自らが苦しむことになるのです。さらに悪いことに、内なる声やチャッターは何もしていないとき、何かをしているときでも自動的に湧き上がってきます。
チャッターは脳の実行機能を独り占めにする
チャッターが脳の実行機能の容量をほとんど占領してしまい、脳が目の前の問題に集中できなくなり、パフォーマンスがガタ落ちします。
チャッターによって動揺してしまうと、高度なスキルを持つ人でも十分な能力を発揮できなくなります。プロ野球選手の投球では腰、脚、腕などの個々の動きが非常に洗練された一連の動きになっています。これらの動きは無意識にできるようになっており、個々の動作を逐一命令しているわけではありません。
プロ野球選手でもホームランを打たれたり、ミスをしたりして、ネガティブな心の声に悩まされると、どのように集中すればいいのか分からなくなります。その結果、洗練された自動的な一連の動作にアクセスできなくなり、本来のパフォーマンスを発揮できなくなるのです。
チャッターは自動的な動作だけでなく、意識的な動作にも悪影響を及ぼします。私たちの脳には「実行機能」という自分の思考と行動を思い通りにコントロールする能力があります。人の脳のCEOとも呼ばれる実行機能の働きを支えているのが、人の額のすぐ後ろにある前頭前野です。人間の実行機能によって、情報を一時的に頭の中に保持する、無関係な情報をシャットダウンする、クリエイティブな発想をする、自制心を働かせることができます。
チャッターは脳の司令塔である「実行機能」の容量をネガティブな心の声で一杯にして独り占めにしてしまいます。そのため、目の前のことに精神を集中できなくなり、脳はネガティブな声で埋めつくされます。このような状態では、良いパフォーマンスが発揮できるはずもありません。
チャッターへの対抗策──「距離を取る」
チャッターに対する対抗策は、自分の思考と「距離を取る」ことです。
チャッターは特定の問題にフォーカスしすぎることで起こる現象で、視野を狭めてしまい他の解決策が思い浮かびづらい状態に私たちを追い込みます。チャッターに対抗するには、特定の問題に過度にフォーカスせずに、距離を取って冷静な視点で考えることです。
問題から距離を取るための有効なテクニックは、
- 第三者視点:ネガティブな出来事を自分の視点で見るのではなく、第三者からや上空から俯瞰した視点から観察すること。ネガティブな感情やストレスが軽減される。
- 他人にアドバイスするつもり法:自分の問題を他人にアドバイスするつもりで解決策を考える。客観的に考えることができ、正しい判断を下しやすくなる。
- タイムトラベル:1か月後、1年後、10年後、20年後などの未来の自分が現在抱えている悩みをどう感じるのかを考える。時間的に距離を取ることで今の問題が大したことではないと気づける。
- 大局的に見る:チャッターに襲われるときは視野が狭まっていることが多いので、自分のこれまでに経験した辛い出来事と比較したり、人生や世界という大きな枠組みで考えたりする。視野を広くすることで、ネガティブな感情が薄れ、新たな解決策が思い浮かびやすくなる。
- マイネーム・セルフトーク:ネガティブな出来事が起こったときに、一人称視点で「私はどうすればこの状況に対処できるだろうか?」と考えるのでなく、自分の名前を使って「〇〇はどうすればこの状況に対処できるだろうか?」と考える。タスクへの緊張や不安や後悔が減り、パフォーマンスが上がる。
になります。一部のテクニックは分かりやすいように、こちらで名付けました。興味あるものから使ってみてください。
「距離を取ること」の効果・注意点
距離を取ることは、チャッターを減らす以外にも様々な効果がありますので紹介します。
- ストレス反応を減る
- 敵意や攻撃性が沈静化する
- うつ状態や不安を軽減する
- ネガティブな気分の持続時間が短くなる
- 反芻が少なくなる
問題から距離を置くことで、ネガティブな気分や感情を減らすのに役立つんですね。悩んでいるときに一歩引いて、他の人も悩みを抱えていると気づくと気分が和らぎますよね。
しかし、ズームアウトすることでポジティブな感情を減ってしまうというデメリットもあります。パートナーとの旅行中に「この楽しい瞬間もすぐに終わる」と考えていると喜びを感じにくくなってしまいます。
楽しい時はズームインして、つらい状況ではズームアウトするといいですよ。
まとめ:チャッターと上手く付き合う
内なる声を人生に活かしつつ、チャッターと上手く付き合うようにしましょう。チャッターに対処するには距離を取ることが有効でしたね。
『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』では、チャッターを軽減させるために儀式やコントロール感を利用するテクニックなども教えてくれます。ネガティブな思考や感情にお悩みの方は読んでおいて、損はないでしょう。
私は自分の名前を使ったセルフトークを良く使います。冷静に物事が考えられて合理的な思考になったり、反芻しなくなったりすることが分かっていますからね。メタ認知を手軽に発動できる貴重なテクニックなんですよ。
メンタルを改善したい人におすすめの本
Chatter(チャッター)―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法
・Chatter(チャッター)―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法
こちらの本は脳内のネガティブな声であるチャッターと距離を取る方法を教えてくれます。
心の声の仕組みと対処法の様々なテクニックを知ることができます。
ネガティブな思考や感情にお悩みの方におすすめな本ですよ。
なぜ心はこんなに脆いのか:不安や抑うつの進化心理学
・なぜ心はこんなに脆いのか:不安や抑うつの進化心理学
人の心が脆弱である理由を進化心理学の視点で学べます。
不安やネガティブな感情の心のメカニズムを教えてくれるので、つらい気持ちがあることへの理解が深まり、対処法も思いつきやすくなります。
メンタルを改善したい方にお勧めです。