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うつ病を引き起こす10種類の認知の歪みとその対処法

2021年8月23日

うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、何をしても楽しめないといった精神症状です。
他にも、眠れない、体がだるい、疲れやすいなどの身体症状が現れることがある病気で気分障害の一種とされています。
うつ病になると誤ったネガティブな考え(認知の歪み)に支配されます。
そして、この認知の歪みはうつ病の人だけではなく、うつ病にかかっていない人にも見られるものです。 

今回は、「うつ病を引き起こす10種類の認知の歪みとその対策法」を紹介します。 

うつ病を引き起こす10種類の認知の歪み

代表的なうつ病を引き起こす10種類の認知の歪みを紹介します。
これらの認知の歪みは、単体だけではなく、組み合わさっている場合もあります。

1、全か無か思考(all-or-nothing thinking)

全か無か思考とは、物事の全てを完全な白か黒かのどちらかに分けて考えることです。
この考え方は、二分法思考とも呼ばれ、白か黒しかないと考え、グレーなどの中間色がありません。

「試験に落ちた私は無価値の人間」などと考え、 少しでもミスがあれば完全な失敗だと考えます。
このような考え方の基盤には完全主義があります。
常に(always)、すべて(every)、決して(never)などの断定的な言葉を使うのが特徴です。

2、過度な一般化(overgeneralization)

過度な一般化とは、ある出来事が一度起こると、それが何度も繰り返し起こるように考えることです。
「彼女をデートに誘ったが断られた。自分は誰からも愛されず、一人で一生孤独に生きていかなきゃいけないんだ」

この歪んだ考え方では、一度、女性に断られただけで、自分は一生女性から拒絶され続けるという結論になります。
もし、その女性がたまたま都合が悪かったとしてもその可能性を考えることができなくなってしまいます。

3、心のフィルター(mental filter)

心のフィルターとは、物事全体のうち、ネガティブな部分だけに注目し、ポジティブな部分を見ないことです。
「試験で100問中17問も間違えた。自分は落第するに違いない」

上の例で言えば、100問中83問は正解しているのに、間違った17問にしか見ていない。
心のフィルターがかかっていると、見えるのは何もかもがネガティブなことばかりになります。

4、マイナス化思考(disqualifying the positive)

マイナス化思考とは、何でもないことや良い出来事を悪い出来事にすり替えてしまうことです。
上手くいったら「これはまぐれだ」と思い、上手くいかなかったら「やっぱり自分は失敗する」と考えることです。

5、結論の飛躍(jumping to conclusions)

結論の飛躍とは、根拠もないのに悲観的な結論を下すことです。
結論の飛躍には、「心の読みすぎ(mind reading)」と「先読みの誤り(the fortune teller error)」の二種類があります。

「心の読みすぎ」とは、他人の行動、態度から、早合点して人間関係をネガティブに思い込むことです。
当人に尋ねることなく、論理的に起こりうる最悪のケースを推測し、その予防措置を取ったりします。
「いつも挨拶してくれる同僚が、今日は挨拶してくれなかった。私を嫌いになったんだ」

「先読みの誤り」とは、物事が必ず悪い結果になると思い込むことです。
悲劇的な結論に一足先にジャンプしてしまいます。
「運動しても痩せない。自分はもう一生太ったままだ」

6、拡大解釈と過小解釈(magnification and minimization)

拡大解釈とは、失敗、弱み、脅威などのネガティブなことについて、実際よりも過大に受け取ってしまうことです。
「ミスをしてしまった。周りから蔑まれるに違いない」

過小解釈とは、成功、強み、チャンスのポジティブなことについて、実際よりも過小に考えてしまうことです。
「試験で良い点数を取ったが、もっと点数を取っている人に比べると情けない点数だ」

拡大解釈、過小解釈をすることで、短所を大げさに感じ、長所を取るに足らないものと考えることで自分を憂うつな気分にします。

7、感情的決めつけ(emotional reasoning)

感情的決めつけとは、自分の感情だけを根拠として、自分の考えが正しいと決めつけることです。
「自分は負け犬のように感じる。だから、私は負け犬だ」

8、すべき思考(should statements)

すべき思考とは、何かをやるときに「〜すべき」、「〜しなければならない」と考えてしまうことです。
「自分は常に正しい人間でなければならない」

この考え方は、自分に常に強いプレッシャーを与えて、自分自身を追い詰めてしまいます。
自分に強いプレッシャーを与えた結果、やる気がなくなります。
すべき思考を他人に向けると、些細なことでも怒り、不満を感じてしまうので注意が必要です。

9、レッテル貼り(labeling and mislabeling)

レッテル貼りとは、間違った認知に基づいて、ネガティブなレッテルを張ることです。
「あの人は失敗したから、役立たずな人間だ」

10、個人化(personalization)

個人化とは、良くない出来事を根拠もなく自分のせいにすることです。 
「チームが失敗したのは自分がいたからだ」

うつ病を引き起こす認知の歪みへの対策法「トリプルカラム法」

認知の歪みの対策法は、自らの認知の歪みを認識して客観的で合理的な考えに変えることです。 

人は昔からの生存本能から危険を回避するために、日常的にネガティブな思考、感情が思い浮かぶようにできています。 
そのネガティブな思考、感情についてずっと考えてしまい、悪い気分になり行動意欲も落ち込み、さらにネガティブな思考のループにハマってしまう場合があります。 

認知の歪み対策法の中でも、効果的な方法「トリプルカラム法」を紹介します。 

トリプルカラム法とは、「自動思考」、「認知の歪み」、「合理的な反応 」を書く方法です。 
自動思考には、自分には価値がない、自分はつまらない人間と思ってしまうなどの思い浮かんだ自己批判的な考えを記入します。 
認知の歪みには、先ほど紹介した10種類の認知の歪みなどを書きます。
合理的な反応には、自動思考に対する合理的で前向きな考えを記入します。

トリプルカラム法から認知の歪みの記入欄を省略したダブルカラム法という方法もありますよ。 
トリプルカラム法をするときは、ノートを均等に3分割するように縦線を引き、左の欄から一番上に自動思考、認知の歪み、合理的な反応の順番に書くといいでしょう。 

トリプルカラム法をすると、自動思考とそれに伴う認知の歪みを書き出すことで、客観的に認識でき、合理的な考えに変えることができます。

まとめ:ネガティブな思考や感情に対処する方法を身に付けよう

ネガティブな思考、感情は避けられないものです。
ネガティブな思考、感情を遠ざけることに努力するのではなく、ネガティブな思考、感情に効果的に対処する方法を学んで実践しましょう。

今回は認知療法の手法を紹介しました。
個人的には、エクスプレッシブライティング、認知療法、ACT、リアプレイザルを使って、ネガティブな思考、感情に対処しています。

ネガティブな思考、感情にハマってしまった時は、トリプルカラム法を試してみてくださいね。

嫌な気分を引きづらないためのおすすめ本
いやな気分よ、さようなら コンパクト版
歪んだ認知を合理的な認知に変える手法を学ぶことができます。
うつ病、承認依存度、愛情依存度、完全主義度などを測り方もありますので、自分の現状を知って対策することができます。
大したことではないのに落ち込みやすい、傷つきやすいという方におすすめの本ですよ。

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心理療法ACTについて教えてくれる本です。
ACTは、ストレス、幸福感、抑うつに大きな改善が確認されています。
ACTとは、内面の経験を受け入れ、現在に生き、自分の価値に沿って行動することにより意味のある人生を創造する、科学に基づいた手法です。
ACTを学べば、ネガティブな感情、思考にずっと囚われずに、自分の価値観に沿った行動ができるようになりますよ。

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