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どうしてもやめられないという依存症を治すにはセルフバインディング!『ドーパミン中毒』

「どうしてもやめられないことがある」
「自分は依存症かもしれない」

こうした悩みを持っていませんか?
厚生労働省によると、依存症の定義は特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になり、自分や他人に問題を及ぼすことです。

人口の41%が、過去1年間に少なくとも1つの行動に依存的に従事していたことが南カリフォルニア大学の研究で判明しています。この研究では、アルコール、ニコチン、薬物などの物質依存とギャンブル、インターネット、買い物、仕事などの行動依存が含まれています。

40%を超えている事実を目の前にすると、依存症はマイナーな症状とは言えません。誰でも依存症になることはありますし、すでに軽度の依存症の可能性がありますよね。

スタンフォード大学医学部教授で精神科医のアンナ・レンブケ先生が書いた「ドーパミン中毒」を読んでいて、依存症の対策として「セルフバインディング」というテクニックが有用だと思ったので紹介します。

今回は「ドーパミン中毒」から依存症の仕組みとセルフバインディングをお伝えします。

依存症はテクノロジーによってさらに増え続けています。依存から自分の身を守る対処法として実践したり、知ったりしておくといいですよ。

ドーパミンと依存症の密接な関係

ドーパミンと依存性はお互いに深く関連しあっています。

科学者は依存性を測るのに、ドーパミンを使います。物質摂取や行動したことでドーパミンが多く分泌されればされるほど、その物質や行動をより求めるようになるので、ドーパミンを多く分泌するものほど依存性が高いと言えます。

ドーパミンは得られる快楽よりも動機づけに関して重要な役割を担っています。「もっと欲しい」という思いにさせて、行動を強く促すんですね。ドーパミンが作れないようにしたマウスは、食べ物を求めずに近くに食べ物があっても餓死してしまったとのこと。

ドーパミンは本能的な欲求を刺激して人を動機づけるので、過度なドーパミンは中毒性がある依存症と深い関わりがあります。

快楽と苦痛のシーソー

快楽を増やして、苦痛を減らしたいというのは本能的な欲求です。しかし、意外と知られていないのが、快楽と苦痛はシーソーの関係であるということです。

神経科学によって、快楽と苦痛は脳の同じ部位で処理することが分かってきました。快楽と苦痛はシーソーのように働くのです。

アルコール好きな人はお酒を飲むと快楽を感じて脳の報酬回路にドーパミンが放出されます。そのままお酒を飲み続けるとシーソーが快楽のほうに強く傾きます。

しかし、人間にはホメオスタシスという自己調整メカニズムがあり、体内の生理機能を一定に保とうします。そのため、人の体はお酒で快楽のほうに傾いたシーソーを水平に保つためにアルコールへの渇望、精神や体の不調などの苦痛を加えます。その苦痛を避けて、さらに快楽を貪り続けると「神経適応」によって、同じ量のアルコールでもドーパミン放出が減少して報酬回路の感受性が低下するため、快楽を感じづらい体になってしまいます。

逆に、冷水浴や運動などの苦痛を与えると、ドーパミン、エンドルフィンなどの多くの神経伝達物質が分泌し、気分が向上します。

つまり、快楽には苦痛がついてまわり、快楽に長時間晒されると閾値が上がってしまい、快楽を感じづらくなるということです。そして、快楽は、運動や冷水浴などの苦痛を与える活動でも得ることができます。

手軽さが依存症の一番のリスク因子

依存症になる一番のリスク因子は、アクセスのしやすさです。身近なところに依存症の原因となるものがあればあるほど、ハマりやすくなります。

その理由は快楽を満たすものが近くにあるため、報酬がすぐに手に入るからです。アメリカで禁酒法が施行された際はアルコール依存症の人が激減しましたが、禁酒法がなくなるとアルコール依存症の人はすぐに増えたとのこと。手に入れやすさは依存行動と結びついているんですね。

依存症となるその他の原因は、余暇時間の増加、遺伝、精神疾患、貧困、社会的混乱などがあります。ただ、依存症の一番のリスク因子はアクセスのしやすさなので、最初に対策すべきでしょう。

セルフバインディングの3つの方法

セルフバインディングは、依存症から自由になるための手段として有効です。セルフ・バインディングは自分を縛るという名前のとおり、依存行動をしないように物理的・精神的な壁を作るテクニックです。

依存症から回復するには、依存行動を断って、快楽と苦痛のシーソーを水平に戻すことが大切です。依存行動をしないでいれば、快楽の傾き過ぎたシーソーでもホメオスタシスによって、徐々に水平になります。「もっとほしい」という大きな苦痛からも解放されます。

セルフ・バインディングが効果的な理由は、ほしいという欲望に対して、事前に対策しておくことで、毎回、意志力を発揮する必要がないことです。意志力に頼っていると、最初の数回は我慢できるかもしれませんが、何十回、何百回と決断にさらされると自分が疲れていたり、別の苦痛を感じていたりすると自制心が負けてしまいます。セルフ・バインディングは1度だけ対策を決めればいいので楽ですよね。

セルフ・バインディングの戦力には物理的、時系列、ジャンルの3つがありますので、それぞれ解説します。

物理的なセルフ・バインディング戦略

自分と依存の原因との間に物理的な壁を作る方法です。依存物質を処分したり、原因となるものを遠ざけたりすることが主な対策になります。

古典的な方法ですが、依存の一番の原因となるアクセスのしやすさをかなり強力に減らしてくれます。自分の手が届かないものに対して、依存しにくいですからね。

具体的には、アルコールを全て処分する、ゲームを倉庫にしまう、アプリをアンインストールするなどですね。アクセルしづらくなればなるほど、より効果的になりますよ。

時系列的なセルフ・バインディング戦略

依存行動を時間制限する、特定のタイミングに限るという方法です。時間やタイミングを制限することで依存度を減らすことを目的にしています。この戦略はスマホなどの生活必需品に使うと良いですよ。

ネットを見過ぎてしまう方なら1日2時間と決めたり、勉強を1日頑張ったらやるというようにしましょう。勉強などと結びつけると報酬になるので、モチベーションを上げることもできます。

自分の依存度を客観的に見ることは依存行動を緩和してくれます。スマホの設定画面で一日の使用時間を見るとその利用時間に驚くかもしれませんよ。ただ、重度な依存症の場合は時間制限やタイミングを守ることが難しいこともあるので他の戦力に切り替えましょう。

ジャンル的なセルフ・バインディング戦略

依存に関わるジャンルのトリガーをすべて制限する方法です。ゲームならゲーム機を処分するだけなく、ゲームをやりたいという欲望を引き起こすきっかけとなる雑誌、インターネット記事、動画などをやめることです。

ジャンル的なセルフ・バインディング戦力はハマっているもの自体とその欲望のトリガーも避けることができます。こうすることで依存欲求自体を大幅に減らすことができます。

依存行動に関連するものを徹底的に排除することは大変ですが、アクセスの制限、欲求減少になるため、とても効果的です。依存行動を完全にやめたいときに使ってくださいね。

まとめ:快楽と苦痛を適度に求める

現代の私たちは快楽が多い一方、苦痛は限りなく少なくなっています。そのため、快楽は感じにくくなり、苦痛は私たちへの鋭い痛みとなって襲い掛かります。

快楽と苦痛をバランスよく取りましょう。快楽にシーソーが偏り過ぎている方は、快楽を減らす、苦痛を増やすことで嫌な苦痛を減らして、快楽をより感じられるようになります。

ちなみに「ドーパミン中毒」では、依存症を治すための薬は依存性があったり、薬の副作用で無感情やうつ病、認知機能低下を引き起こしたりする可能性があるとの指摘がありました。依存症を直す薬に依存するといった実例も挙げられています。

アンナ・レンブケ先生が依存についての教訓について、以下のように述べています。

世界から逃げ出すのではなく、世界の中に没入することで本当の癒しが見つかる。

依存することで現実から逃避するのではなく、現実に向き合うことが大切とのこと。私も快楽と苦痛のシーソーを意識するようになり、快楽、苦痛をバランスよく取り入れるようにしています。

依存症対策のおすすめ本

ドーパミン中毒

ドーパミン中毒
ドーパミン、快楽と苦痛、依存症の対策法をスタンフォード大学医学部教授であり、精神科医のアンナ・レンブケ先生が教えてくれます。
実際にカウセリングしたクライアントの悩みと解決した方法を述べているので、依存症について知りたいという方にもおすすめです。

僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた

僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた
こちらの本はSNS、ゲーム中毒などのデジタルへの依存症を解説しています。
私たちがなぜ依存するのか、依存症からどうやって抜け出せばいいのかを教えてくれます。
逆に依存する仕組みを使って良い行動を促す方法も教えてくれるので、依存症の人だけでなく、目標を達成したい方にもおすすめの本です。

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