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幸せとは「心の平穏」、すなわち「無我」になること

2023年5月1日

「幸せになりたい」
「毎日が退屈」
「常に満たされない」

誰しもこのようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。常に何かが足りないという気持ちを抱いている人も多いと思います。

幸せとは一体何なんでしょうか?

幸せとは「心の平穏」です。

幸せは何かを得るときだけに感じるものではありません。むしろ、何かを得たり、成し遂げたりしたら幸せになるという考え方に取りつかれると不幸になります。今回は、「幸せにつながる心の平穏を得る方法」を紹介します。

本当に幸せな人は些細な日常から幸せを感じていることができます。幸せになる方法も紹介しますので、最後まで読んでいってくださいね。

心の平穏がないと幸せにはなれない──「幸福は内にある」

人間のあらゆる問題は、一人で部屋に静かに座っていられないことから生じる

ブレーズ・パスカル『パンセ』

幸せになれるのは自らの手で内的な平安を得ることができる人です。不安などのネガティブな考えが人を不幸にしますので、不幸となる要因を取り除くことが幸福になる近道と言えます。

人はニュートラルな状態では幸せを感じやすくなります。家でご飯を食べたり、お風呂でリラックスしたり、ただ寝たり、誰かと話をしたりといった、当たり前の日常の幸せに気づくことができます。瞑想をしている人はうつ、不安が減り、幸福度が高いということがイエール大学らの研究で分かっています。

逆に、不安や心配事などに常に囚われている人は幸せとは言えませんよね。どんなにお金があったり、素敵な場所にいたりしても、心の状態が不安定であれば、目の前のことに上の空になってしまい、全く楽しめませんよね。内面の平穏がなければ、外がどんなに恵まれていようが幸せをほとんど感じることはできませんし、むしろ、気持ちが落ち込んでいきます。

このようにネガティブな思考を抱き続けることを反芻といい、悲しみや落ち込みを強め、うつ状態を長引かせることがエクセター大学の研究で明らかになっています。幸せになるには、内面の平穏が大切なんですね。

内面の平穏はトレーニングで伸ばせる能力なので、幸福は身に付けて伸ばせるスキルです。心の平穏を得られたら、日常の一瞬一瞬を楽しむだけでも幸せを感じられるようになります。

幸せを妨げる大きな障害

不幸になる考え方や行動の中で、特に影響が大きい3つの障害を紹介します。

これらの障害に心当たりがある方は、取り除くことから始めていきましょう。対策するだけでも幸福度が上がっていきます。

幸せは外にあると考えている

多くの人がしてしまう間違いは、外からやってくる物や人が幸せを運んでくると考えることです。欲しいモノがやってきても、すぐに興味を失い、次の欲しいモノができます。

「あれを手に入れたら幸せになる」と思い込んでいると、欲望の無限ループにハマり、抜け出せなくなります。

欲望を追い続けることは、「欲しいものを手に入れるまで不幸でいます」という悪魔の契約を自分自身と交わすことです。さらに悪いことに、人間の欲望には限りがないため、一生のほとんどを不幸でいることになります。オーストラリアカトリック大学の研究によると、外的な目標を追い続ける人は幸福度が低く、挫折しやすいということが分かっています。

外の世界に何かを求めるのは、都合の良い妄想です。このように外部に幸せを求めると不幸になりますし、自分で幸せになる努力もしなくなってしまいます。

果てしない欲望のゲームから降りて、幸せは内にあることを認識しましょう。幸福になるスキルを少しずつ磨いて、自分で自分を幸せにしてあげることが大事です。

今この瞬間を生きていない

現代の人は驚くほど今の瞬間を生きていません。今この瞬間に集中していなければ、本当の意味で生きているとは言えません。

特に問題なのはスマホ依存です。恋人や友達との会話中にスマホをいじったり、暇な時間のほとんどをSNSや動画、ゲームに費やしたりしている人は多いですよね。自分でこれらの行動を選択しているように思えても、実は他者によって自分の行動をコントロールされています。

スマホアプリを提供している企業の利益のほとんどは広告収入によるものです。広告収入は誰かがその広告を見たり、サービスや商品を買ったりしてくれることで得られるので、人の注意を最大限引きつける必要があります。そのため、アプリ会社が巨額の利益を出すために、人間がハマって抜け出せなくなるようにアプリをデザインしています。

スマホのせいで現実に問題が起きている場合はスマホ依存の可能性が高いので、スマホと距離を置いたり、専門医に相談したりするようにしましょう。

その他の不安や心配が尽きないという問題は、内面をコントロールする力が不足していることが原因です。自己コントロールする力を高めて、大切な人と過ごす、自己成長などの本当にやりたいことに集中して、人生を心から楽しみましょう。

足りない思考になっている

常に自分の人生に何かが欠けていると考える「足りない思考」は人を不幸にします。この思考に陥っている人は完璧主義の傾向があり、自分や他人、環境に対して過剰な期待を持っているため、自分や相手への不満、外部環境へのいらだちをいつも抱えています。

Instagram、Twitter、YouTubeなどのSNSを利用している人は他者と自分を比較して、「自分には足りないものがある」という思考になりやすいです。SNSでは完璧に見える人生のコンテンツで溢れかえっています。実際にはフェイクだったり、現実を反映したりしているわけでもないのにもです。

これらのSNSサービスを使っていて、生産性を感じない、落ち込むことが多いという方は利用方法を変える、アプリをアンインストールするといった対応をしましょう。具体的な方法は、『SNSを上手にやめて幸せになる!科学的なSNS断ちのメリットとやめる方法を解説』をご参照ください。

自分にネガティブな評価を抱くことは欠陥という信念で孤立と同じくらいメンタルに悪いことがオーストラリアカトリック大学らの研究で明らかになっています。これらの信念を持っている人ほどうつ病を発症する危険性が高かったとのこと。悪いことを信じ込むと、そのとおりになるというのは「ノセボ効果」と言い、科学会ではよく知られている現象ですね。

すべてにおいて完璧な人は存在しませんし、誰でも欠点を持っています。絶対に届かないハードルを設けて絶望するのではなく、現状でも十分足りている状況を認識して満足することができる「足るを知る」人になりましょう。人は手に入れたものに慣れてしまうので、定期的にいまあるものを感謝する習慣を身に付けましょう。

人生に何かが欠けているという感覚がなくなったとき、幸福がやってきます。つまり、自分の解釈次第で不幸にも幸福にもなれるということですね。

心の平穏を得る3つの方法

心の平穏を得るには自己に関する思考や感情から解放される必要があります。なぜなら、苦しみの大半は「あの人と同じようになれたら…」「あれが手に入ったら…」と自分に関わるものだからです。苦痛を生み出す自我から脱却して、苦しみや悩みが生じることのない状態を、仏教では「無我の境地」と言います。

「無我」に至ることができれば、心の平穏を得るのは難しくありません。ここでは苦しみのない「無我」になるための方法を紹介していきます。

  • 集中瞑想:特定のものに意識を向けて、自己に関する思考や感情をシャットダウンする手法です。呼吸に意識を向ける「呼吸瞑想」などが代表的です。
  • 観察瞑想:自己に関する思考や感情をただ観察して自分から切り離します。何も考えずにぼーっとして思考を観察する瞑想法があります。
  • マインドフルネス:今この瞬間に集中することです。何かに囚われることなく、目の前のことに集中しているため、人生を本当の意味で楽しむことができます。

どの手法から初めても構いませんが、おすすめの順番は集中瞑想⇨観察瞑想⇨マインドフルネスです。集中瞑想で思考や感情を停止させる、観察瞑想で思考や感情を自分から切り離す、マインドフルネスで人生を楽しむというような効果があります。

瞑想やマインドフルネスは自己に関するものだけでなく、あらゆる思考や感情をシャットダウンし、距離を置くことができます。

1、集中瞑想

集中瞑想はひとつの物事に集中する力を鍛えるメンタルトレーニングです。様々な種類がありますが、本質的には「何らかの対象物に意識を向け続けるという集中力のトレーニング」です。最初に述べたように、瞑想でうつや不安が減り、幸福度が高くなるということが確認されています。

集中瞑想の中でも代表的な呼吸瞑想のやり方は以下のとおりになります。

  1. リラックスした姿勢で座り、目を閉じる
  2. 鼻呼吸に意識を向ける
  3. 鼻の鼻腔内に空気が行き来する感覚に意識を向け続ける
  4. 呼吸から意識が逸れたら、呼吸に再び意識を戻す

特定の対象に意識を向ければいいので、好きにアレンジしてかまいません。瞑想中に寝っ転がってもいいですし、呼吸時のお腹の伸び縮みに意識を向けるという方法でも大丈夫です。

休憩時に呼吸瞑想をするのがおすすめですよ。休息の妨げとなるスマホを触らなくなり、集中力を高めて、脳の活動を効果的に休めるというメリットがあります。

集中瞑想をすることでネガティブな思考が思い浮かんでもずっと思い悩むことなく、自分が望むことに意識を向けることができます。

2、観察瞑想

観察瞑想は思考や感情を自分ごとして捉えずに自然に消えていくのを観察するメンタルトレーニングです。観察瞑想もうつや不安、さらに痛みを軽減するという効果があることがジョンズ・ホプキンス大学らの研究で明らかになっています。

観察瞑想のおすすめの手法は、「何も考えずにぼーっとすること」です。ただぼーっとして、思考が浮かんできたらただ観察するだけです。座りながらでも寝ながらでも落ち着ける姿勢でやりましょう。

空き時間や寝る前に観察瞑想するといいですよ。寝る前だと入眠しやすくなりますし、習慣づけやすくなります。

観察瞑想で思考や感情を自己から切り離し、穏やかな気持ちでいられるようになります。

3、マインドフルネス

マインドフルネスは、「今この瞬間に集中すること」です。今に意識を向けることで、目の前のことに全力で楽しむことができます。

マインドフルネスも科学会でお墨付きのメンタル・トレーニングで、やればやるほど注意力が鍛えれます。過去の研究から、筋トレで筋肉が育つように、マインドフルネスで脳の部位を厚くなり、注意力や集中力が上がり、自己を制御できるようになることが分かっています。

マインドフルネスを実践するには目の前のことに意識を向けましょう。瞑想と一緒で注意が逸れたら、今この瞬間に注意を戻せばいいです。

マインドフルネスを実践するおすすめの活動は、お風呂、シャワー、歯磨き、運動などです。お風呂では暖かいお湯が肌を包む感覚、シャワーは水が皮膚に当たる感覚に集中しましょう。マインドフルネスを日常の中で意識して行うことが大切です。

多くの不幸は、今この瞬間から離れて、自分のことや未来、過去を考えたりすることから生じています。今この瞬間に集中することで人生を本当の意味で味わうことができますよ。

まとめ:幸福は自己への執着を捨てることで得られる

人は外部の環境を変えれば幸福になれると信じています。しかし、幸福は心の持ちようであり、自分自身の中にあります。

心の平穏がある状態だと目の前のことに集中しやすくなり、幸せをより感じられるようになります。そして、正しいマインドセットや知識、瞑想、マインドフルネスで得ることができます。『デフォルト瞑想』を実践するとさらに心の平穏を得やすくなります。

幸福は技術であり、自分自身で高めることができるということですね。自我から無我の境地に達することができるように、瞑想、マインドフルネスを実践し続けることが大切です。

幸福を高める方法として、「セイバリング」という幸せな瞬間を味わうテクニックが有効です。セイバリングを実践していると、楽しいところを見つけて没頭する機会が増えます。詳しくは以下の記事で紹介していますので、お読みください。

私は「幸せは内にある」という考え方を知ってから、瞑想を実践し、今この瞬間を大切にしています。人生は今この瞬間の積み重ねで出来ていますからね。

人は手に入れたものにはすぐに慣れてしまうため、日常の一瞬一瞬を意識して味わうようにしましょう。常に何かを求めるという無限の欲求に支配されて、大事なものを失ってしまう「足りない思考」には気を付けましょう。

古代ギリシアの哲学者であるエピクロスは次のように言っています。

持たざるものを求めることで持つものを損なってはならない。
しかし覚えておけ、いま持つものはかつて求めたものの内であることを。

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