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本当に支援するには深い人間関係が大事──『謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か』

本当の意味で支援をしたいという思いはありませんか?
今回はそんな悩みにお応えします。

心理学者のエドガー・シャイン先生の著書『謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か』から、「本当の支援をする方法」を紹介します。シャイン先生は、アップル、P&G、ヒューレット・パッカードなどの超有名な企業のコンサルティングをしてきた方なんですよ。

支援するために重要な「レベル2の人間関係」を知っておくと、ビジネス、プライベートで役に立ちますよ。私も意識するようになってから、仕事がしやすくなったと感じています。

なぜ謙虚なコンサルティングが大切なのか

現代のビジネスは今までにない複雑な問題と、多種多様なクライアントに直面しています。これらの課題に対処するために、「謙虚なコンサルティング」という新しいコンサルティングモデルが求められています。謙虚なコンサルティングでは、より親密な関係をクライアントと築くことになります。

謙虚なコンサルタントになるには、

  • 「なんとかして役に立ちたい」と思って全力を尽くすこと
  • 誠実な好奇心と思いやりのある姿勢を持つこと
  • クライアントの本当の思いを積極的に突き詰めること

が必要です。これらの態度により、クライアントとの初対面でも信頼し合って率直に話のできる関係を築くことができ、支援が可能かどうかを判断しやすくなります。さらに、関係構築のプロセス自体が、クライアントにとって有益な行動を考えられるようになります。

クライアントとの関係を構築する際には、「(専門的職業にありがちな)ほどほどの距離感」という堅苦しさをなくすことが大事です。コンサルタントかクライアントのどちらかが、個人的な質問をする、もしくは個人的なことを打ち明けることによって、お互いに信頼できるように打ち解けた会話をする必要があります。

コンサルタントにとって一番重要なことは、クライアントの本当の懸念や考えを知り、理解することです。それには、何が起きていて、どんなことが気になっているのかをクライアントに尋ねるときも、コンサルタントは「パートナー」であり、「支援者」になる必要があります。謙虚なコンサルティングは、標準的な指針やチェックリスト、表面的なディスカッションではなく、フレキシブルな対応が必要な即興劇、キャンプファイヤーを囲みながら率直に話し合うような本物の対話に似ています。

謙虚なコンサルティングとは、従来のコンサルティングよりも個人的な関係をクライアントと築くことを目指すモデルであり、柔軟で迅速な対応が求められる現代のビジネスに適した方法です。このアプローチを採用することで、クライアントの真の懸念や考えに寄り添いながら、信頼関係を築き、効果的な支援を行うことができます。

人間関係の4つのレベル

謙虚なコンサルティングは、人間関係のレベルを意識することが必要になります。 シャイン先生によると、人間関係という言葉は意味が曖昧なので、人間関係は「過去の付き合いに基づいた、互いの未来の行動についての、一連の相互期待のこと」と定義しています。浅い関係だと相手の行動を少し予想できる程度ですが、深い関係だと相手の考え方や感じ方や価値観を承知しているので、相手の行動をより精度の高い予測ができます。

人間関係は相互作用であるため、「私はあなたと個人的な関係がある」と言ったとしても、相手がそのような結びつきを感じていなければ、関係とは呼べません。つまり、相手への思い、信頼、会話が一方通行である場合には関係ではないということです。そして、相手との関係のレベルは日々のやりとりの積み重ねの結果であり、お互いの安心感の程度に基づいて両者が決めるものです。

シャイン先生曰く、人間関係のレベルは「-1.1.2.3」という4段階あるとのこと。レベル-1はネガティブな敵対関係にあり、一般的に囚人、戦争捕虜などを指すため、レベル1~3を紹介します。結論から申し上げると、相手を効果的に支援するためには、レベル2の関係を目指しましょう。

  • レベル1:一般的な礼儀、取引、専門職としての役割に基づく関係。見知らぬ他人、金銭を通じた事務的なサービスを提供する人など、社会通念上、礼儀をわきまえた人として「ほどほどの距離」を保って会話する関係。
  • レベル2:固有の存在として認識している関係。個人的な知り合い、同僚、上司、部下、たまに会う友人といった、通常よりも深い信頼、素直さを示しあう関係。
  • レベル3:深い友情、愛情、親密さがある関係。親友、恋人、結婚相手、家族などの素の自分を見せられ、積極的に支援しあう親密な関係。

ビジネス上の付き合いに注目して、それぞれの人間関係のレベルを詳しく見ていきましょう。

レベル1 取引上の「ほどほどの距離」を保った関係

知らない人との関係はレベル1であり、私たちの人間関係は基本的にレベル1に分類されます。ただし、見知らぬ他人であっても一般的な礼儀、マナー、差別しないという文化的なルールがあり、ある程度の信頼が存在しています。レベル1では個人的なことに踏み込まずに、感情表現を控えめにするため、一言でいうなら「表面上の付き合いの関係」ですね。

ビジネス上のやりとりであっても、支援される側は助けを求めることに引け目を感じており、本当の問題や考えを打ち明けようとしません。そのため、レベル1の関係では、相手との深い信頼関係がないため、当たり障りのないうわべの情報をやりとりすることになります。

問題が単純であれば、支援者が問題を正確に把握し、有効な解決策を講じることができます。しかし、問題自体が複雑だったり、入り組んだ人間関係や組織機構の課題がある場合は行き詰ることになります。また、支援される側が見かけの情報だけを提供し、支援側が単純な問題を解決したと思っても根本的な問題は放置されたままということが起こりえます。

そのため、クライアントに対しては、相手とお互いに信頼しあい、率直に対話できるレベル2の関係を構築することが大切です。

レベル2 個人的な関係

相手を信頼できて、個人的な話のできる関係がレベル2になります。謙虚なコンサルティングの本質は、クライアントと初めて話をするときからレベル2の関係を築き始めることです。

なぜなら、コンサルタントはクライアントの本当の考えや思いをできるだけ早く知る必要があり、共同で問題を解決するからです。相手から深い情報を得ることができれば、表面上の問題ではなく、本質的な問題にアプローチできますし、無駄でコストのかかる診断や介入を省くことができます。コンサルタントよりもクライアントのほうが自分自身や組織のことを分かっており、お互いのやりとりの中でクライアントが良い解決策を思い浮かぶことも少なくありません。

クライアントと良い関係を築かなければ、真の課題に取り組めているか、今の支援が役立っているかということも判断ができません。特に重要なことは、力になりたいという気持ち、クライアントへの思いやり、誠実な好奇心を持つコンサルタントの姿勢です。レベル2の関係は相手への深い信頼が必要になります。

レベル3 親密さ、愛着、友情、恋愛感情

レベル3は、より強い感情をお互いに持っており、思いやりや愛情のある態度を積極的に示す親しい関係です。仕事の関係では、一般的に避けたほうがいい関係性とされています。

仕事でレベル3の関係を持ち込むとなれ合い、えこひいきなどの組織の腐敗につながる可能性があります。一方で仲間との高度な連携が必要な消防士や軍隊などは、レベル3の近い親密な関係性も必要とされます。レベル2との明確な線引きはないため、仕事では信頼し合い、率直に話し合えるレベルの心地よさを探すことが大切です。

アダプティブ・ムーヴで変化を引き起こす

相手を効果的に支援するには「アダプティブ・ムーヴ」が欠かせません。

アダプティブ・ムーヴは、手間暇のかかる診断や介入ではなく、変化が激しく迅速な対応が求められる時代に適した方法です。アダプティブ・ムーヴとは短時間で変化を引き起こすような小さな行動のことで、長い時間を要する「問題」に対する解決策ではなく、状況を改善したり、次のムーヴへつながるより診断的なデータを引き出したりすることを目的としています。クライアントへの質問や会話、一緒に問題の本質を探ること、ちょっとした行動などが挙げられます。

アダプティブ・ムーヴは、コンサルタントとクライアントが行う即興劇のようなものです。率直に話し合い、良い関係を築き、力を合わせて即興で行動を生み出すほうが、素早くて効果が高い支援となります。

まとめ:本当の意味で役に立つということ

確実に支援するためには、クライアントの本当の問題を突きとめる必要があります。 そのため、コンサルタントはクライアントが素直な懸念を打ち明けられるくらい、十分に安心できると思ってもらえるような関係を構築しなければなりません。初めての会話から、「力になりたいという積極的な気持ち」、「誠実な好奇心」、「相手への思いやり」を態度で示すことによって、相手との関係を打ち解けたものにしましょう。

謙虚なコンサルティングは、コンサルタントだけでなく、家庭や仕事の問題解決などの一般的な支援にも使えます。親が謙虚なコンサルティングを取り入れると子育てが上手になりますし、パートナーと一緒に問題をより効果的に解決することができます。

私も誰かと共に問題に取り組むときはレベル2の関係を意識して作るようにしていますよ。他人行儀でとっつきにくいなと思っていた人でも、個人的な関係になると一緒に仕事をするのが以前よりも楽しくなるなどの思わぬ副産物がありました。「すべての悩みは対人関係の悩みである」とアドラー先生が言ったもの頷けます。

支援するためのおすすめ本

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か
アップル、P&G、ヒューレット・パッカードなどの世界的な企業を相手にコンサルティングをしてきたシャイン先生による本になります。
豊富な経験から本当の支援をするための方法と考え方を教えてくれます。
コンサルタントでなくても、誰かの役になりたい、力になりたいと思っている方におすすめです。

親切は脳に効く

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こちらの本は、科学的な視点から効果的な親切法、親切の効果を教えてくれます。
親切にする方法を実践することで、相手だけでなく自分にも様々なメリットがあることを知れますし、他人に優しくしようというモチベーションが上がります。

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