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心理的リアクタンスとは?原因、YESを引き出す6つの説得方法

2022年7月9日

「子どもが自分の言うことを聞かない」
「パートナーがいつも反発や反論してくる」

このような悩みはありませんか?
これらは心理的リアクタンスが原因かもしれません。
心理的リアクタンスとは、自分の選択する自由を奪われたと感じるときに生じる反発心のことです。

心理的リアクタンスが発動すると、こちらがどれだけ正しいことを言っても相手は動かなくなります。
むしろ、強く言えば言うほど相手は反発してくるようになります。
説得は相手の利益になるかどうかだけではなく、相手が自分で納得できるかどうかにかかっています。

心理的リアクタンスとは

「心理的リアクタンス」とは、選択する自由が脅かされたときに起こる、自由を取り戻そうとする反発作用のことです。

人は外部から抑圧されることなく、自由であろうとします。
勉強しろと言われたらやる気がなくなったり、夜ふかしはするなと言われるとやりたくなったりしますよね。
自発的にやりたいことでも、他人から報酬をあげると言われた途端、モチベーションが下がります。
金銭的インセンティブは単純作業以外のほとんどの仕事でモチベーションを下げることが研究により明らかになっています。

相手に必要だと思ってしたアドバイスも相手視点では意見を押し付けられているように感じます。
会話で求められてもいないのにアドバイスをするなと言われるのは心理的リアクタンスが一因となっています。

なぜ心理的リアクタンスが起きるのか?

心理的リアクタンスが起こる理由は、人は本能的に自由を奪われることを嫌うからです。

自由がないと行動が制限されて、食べ物、新しい出会いなどが得られなくなります。
これらの機会が人の個体が生存していくのに重要なのは言うまでもありません。
そのため、人は外部から強く押さえつけられると反発するようになっているのです。

2011年の研究では仕事の裁量権が高いほうが離職率が低く、仕事の満足度、人生の幸福度が上がることが分かっています。
人は自由がないと不満を感じ、自由度が高いほうを好むんですね。
お金持ちになりたい、副業やフリーランスで自分の好きなように仕事をしたいというのも、自由を求める本能が関わっていると言えますね。

心理的リアクタンスは自由がないことを嫌い、自由を好む人間の心理的傾向によって、引き起こされます。

自由を奪うNGな2つの説得方法

NGな説得法は相手の行動を強制することです。
心理的リアクタンスを発動させてしまい、逆効果になるので気を付けましょう。
短絡的に相手を説得しようとすると失敗してしまいます。

NGな説得法では、相手がその場では納得したように見えても、行動しなかったり、自分を避けたりするようになります。
相手との信頼関係がなくなってしまい、長期的な人間関係にヒビが入ってしまいます。

1、禁止

NGな説得法の1つ目は、他人の嫌な行動をただ禁止することです。
相手に「ゲームするな」、「異性と遊ぶな」と一方的に言うことですね。

人は禁止されると逆に魅力的に感じたり、そのことばかり考えてしまったりします。
何かをしないという目標を立てると失敗しやすくなりますし、シロクマのことだけは考えるなと言われるとたくさん考えてしまったりと禁止のデメリットは数えきれないほどあります。

禁止するよりも双方で話し合って妥協点を見つけましょう。
お互いが得するような提案が理想です。
どうしても禁止しなくてならないものはその理由や自分の思いを丁寧に伝えましょう。
禁止の基準を明確にしておくことで相手はなぜ駄目なのかを理解しやすくなります。

2、命令

NGな説得法の2つ目は、自分の望む行動を強く指示することです。
強く命令すればするほど、相手は反発心を生みます。

・ダラダラしてないで勉強しなさい
・遊ぶ暇があったら掃除しろ

こういった命令はいずれ無視されます。
やる気を一時的に見せても、監視がないときはサボります。

命令しても反発を生むだけです。
優しく伝えるだけでも抵抗感を減らせますよ。

YESを引き出す6つの説得方法

YESを引き出すには、相手が自分で選んだ行動だと納得させることが重要です。
人を動かすのが得意な人は相手を自発的に動かすテクニックを知っています。

相手を動かす6つの説得方法を紹介します。

1、ナッジ

ナッジとは、望ましい行動をするように誘導するテクニックのことです。
健康的な食品を食べてほしい場合、サラダの量を増やしたり、家からお菓子をなくしたりすることですね。

ナッジは人の行動を変えるということが研究によって確認されています。
ナッジにはたくさんの種類があります。
並ぶ列に線や足跡を書くことで混乱なく並べるようにする、飲食店のメニューにおすすめと書いて自信作のメニューを食べてもらうなどですね。

ナッジの中でも手軽で効果が高い手法は、行動デザインです。
行動デザインとは、望む行動を取れるように環境を整えるテクニックです。
実践するには、良いものは手間を減らし、悪いものには手間を増やしましょう。
人はエネルギーを節約する傾向があるので、物理的・精神的にラクできるものを選びます。

新しい業務改善案を提案するときに、次のどちらが意見が通りやすくなるでしょうか?

1.賛成の人は手を上げてください
2.反対の人は手を上げてください

正解は2です。
参加者は最初は手を下ろしている状態なので、手を上げるには提案のメリットやデメリットを計算しなければならず、周囲の影響や印象も考えなければならないため、労力がかかります。
手を下ろしたままであれば、そのままでいいので楽ですよね。

望ましい行動が取りやすくなるように環境を整えてください。
相手の行動が望ましいものになりますよ。

2、ポジティブラベリング

ポジティブラベリングとは、相手に望ましいラベルをして、望む方向に動かすことです。
「努力家」「面白い人」などの望ましいイメージを伝えて、意識させることですね。

ラベリングは良い方向にも悪い方向にも使うことができます。
「口下手」「不器用」はマイナスなラベリングですね。
他人から話すのが下手だと言われて、「自分は口下手だ」と思ってしまうと、コミュニケーションを避けるようになり、実際に口下手になってしまいます。

ポジティブラベリングをする際は、心の底から相手を褒めましょう。
「プロ顔負け」「完璧」などと大げさに褒めると相手にバレるという研究があります。
相手を観察して良いところを本心から褒めましょう。
本人も自覚して、ポジティブな特徴を伸ばすようになります。

結果よりも、努力、過程を褒めるようにすると良いですよ。

3、選択肢を与える

相手に選択肢を与えて、選ばせましょう。
自由を与えつつ、こちらの望む方向に進ませることができます。

選択肢を提示することで、相手はどれがベストな選択肢なのかと考えるようになります。
それに対して、1つの提案の場合、提案のメリットやデメリットを細かく分析し、比較した上でYesかNoで答えます。
つまり、選択肢を提示することで、相手が提案を批評するのではなく、どれを選ぶかという思考になるんですね。

ただし、自分にだけ有利な選択肢を提示するのはNGです。
相手と自分にとって望ましいことを考えた上で選ばせましょう。
あくまで相手が自分で選んだと思ってもらうことが重要です。

複数の選択肢は、行きたい場所や食べたいものを尋ねても、何でもいいと答える人に有効です。
相手は好きなものを選べますし、こちらも良いと思うものを1つに絞り込まずに済みます。

選択肢の数は3つだとすぐに選べるのでおすすめですよ。

4、質問をする

質問をすることで相手の行動を変えることができます。
質問によって、相手に自問自答を促し、相手自身を説得してもらうのです。

相手は自らの意思で決断するため、心理的リアクタンスが発生しません。
こちらの望むように動いてもらえるように、問いかけを工夫しましょう。

  • 英検2級取るためにはどれくらいの時間が必要かな?
  • 定期的に運動しないと、どのような悪影響があると思いますか?

勉強に必要な時間を聞くことで考えの甘い勉強計画を修正したり、悪影響を問いかけることでデメリットに気づかせたりすることができます。
質問することで相手が答えを見つけてくれるため、こちらで具体的な選択肢を考えなくてもいいというメリットもあります。

質問は相手が自由意思で考えて決断するので、行動する意欲も高くなりますよ。

5、行動と価値観のギャップを明確化する

相手の価値観と行動が一致していない場合、相手に気づかせましょう。
相手の行動を変えることができます。

人には一貫性を保ちたいという心理的傾向があります。
自分の価値観、行動に矛盾が起きると、落ち着かない状態になります。
このことを「認知的不協和」と言います。
認知的不協和を感じると、矛盾を解消しようとするのです。

相手の価値観、行動を特定した上で質問することが大事です。
具体例を挙げましょう。

  • (自分は良い子だと言ってる子どもに)良い子なら掃除できるよね
  • (家族思いだと自負している夫に)お酒をたくさん飲むことは家族のためになるのかな?

先に価値観の質問をしたり、ポジティブラベリングしたりすると、ギャップをさらに意識させることができます。

6、信頼関係を結ぶ

信頼関係を築きましょう。
いくら正論を言っても信頼関係がなければ、相手を動かすのは困難です。
しかし、信頼できる間柄であれば、耳を傾けてくれます。

親密な関係になるためには、共感と理解を示しましょう。
会話では「アクティブリスニング」という傾聴と共感のテクニックが有効です。
アクティブリスニングで相手が自分のことを理解していると感じ、会話の満足度が向上することが研究で明らかになっています。
会話の内容は、相手の感情、思いにつながるような深いものにしましょう。

相手と信頼関係を築いた上で、説得しましょう。

まとめ:最高の説得方法は相手に自分自身を説得させること

心理的リアクタンスを和らげるには、相手に自分自身を説得させることが大切です。
自分で選んだことなら本人も納得でき、行動を変えてくれるので説得する側にもメリットがあります。
双方ともWin-Winの関係になるように説得方法を使いましょう。

今回のテクニックは、自分自身への説得にも使えます。
私は自分でもナッジ、質問、価値観と行動の一致は日常的に取り入れています。
ライターとしてどんなスキルを身につけたらいいか、役に立つ知識をどうしたら提供できるのかを普段から自分に問いかけていますよ。

心理的リアクタンス・説得に関するおすすめ本

THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術
人の心を動かす「カタリスト」になる方法を教えてくれます。
行動の変化を妨げる障害を取り除くことで、少しの力で相手を動かすことができます。
人の考えと行動を変えるテクニックを知ることができます。

PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間
「影響力の武器」で有名なロバート・チャルディーニ博士の本です。
こちらの本は「下準備=PRE-SUASION」をしてから人を説得する心理学的手法を明らかにしています。
説得のプロは、巧みな下準備によって、相手を動かしています。
この本を読めば、相手を望む方向に説得することができますよ。

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