セルフコントロールとは自分の感情・思考・行動を制御することで、目標達成に大事な能力とされているんですね。ケース・ウェスタン・リザーブ大学らの研究では、セルフコントロール能力が高い人は周囲からの評価が高く、感情的に安定しており、不安やうつ、アルコール依存症、強迫神経症などの問題が抱えることが少ないということが分かっています。
万能にも思えるセルフコントロール能力ですが、過去の研究から「実は衝動を抑制する能力だけではないんじゃないの?」という疑問が投げかけられています。衝動や欲求を感じたときに我慢する能力のように捉えがちですが、それは間違いではないのかということですね。
今回は、「セルフコントロールは誘惑自体を無くす力のことだ!」というアルベルト・ルートヴィヒ大学らの研究を紹介します。
この研究では、対象者は総計159名の成人で、脳波計を使って安静時の脳波を分析し、セルフコントロール能力との関連を調べてくれています。セルフコントロールの自己申告、リスク行動、抑制の神経指標と心がさまよいやすい状態とされるぼんやりとしたときの脳波を見て、セルフコントロール力は何なのかという点を明らかにするという実験になっています。
なぜ脳波を調べるのかというと、脳の精神的な状態を調査するためです。脳波で神経ネットワークを分析することで、精神的なプロセスの移り変わりが分かるんですね。
その結果は、
- 安静時ネットワークの時間的安定性(持続時間が長く、他の脳波の発生回数が少ない)は、自己申告によるセルフコントロール、抑制制御の神経指標とポジティブな関係を示し、リスク行動と負の関係を示した。これらの結果は、安定した精神処理が自己制御的な心の中核をなすことを示唆している
- 自制心のある人は、課題がないときに、脳内の精神的処理の安定性が高かった
とのこと。セルフコントロール力が高い人は、1つの脳波の時間が長続きし、他の脳波の状態への切り替わりが少ないということですね。1つの物事に長く意識を向けて、他のことを考えないという集中力と似ていますね。
研究曰く、
研究の結果、自制心のある人は、精神的な処理の切り替えは少なく、より長く持続することが示された。この結果は、自制心の高い人は、中断される思考や衝動が少なく、より安定した精神的プロセスを持つことを示唆している。この結果は、「安静時」の脳の流れを分析することで、私たちの心の性質に関する重要な情報を明らかにすることができるかもしれない。将来的には、精神処理の安定性の個人差を評価することで、自制心の欠如に関連する疾患の理解や治療に役立てることができる可能性がある。
だそう。セルフコントロール力を発揮するには、そもそも誘惑自体をシャットアウトすることが大切ということですね。気の散らないような環境づくりを意識してみるといいんではないでしょうか。
この研究結果を踏まえると、セルフコントロール力を高めたいという方は「If-Thenプランニング」、「行動デザイン」のテクニックを取り入れるといいです。If-Thenプランニングは過去の記事でも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。行動デザインの本は最後におすすめ本として紹介します。
思考の中断を防ぐには、部屋やデスクに余計なモノを置かずに、綺麗にしておくのが良さそうですね。必要最小限のモノで暮らすという生活スタイルである「ミニマリズム」もセルフコントロール力の向上に役立つんではないでしょうか。
セルフコントロールを高めるためのおすすめ本
・やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学
こちらの本はセルフコントロール力を高めながら、目標達成に必要な知識を紹介しています。
その中でif-thenプランニング、誘惑を避ける方法などの知識について、分かりやすく書かれています。
目標を途中で挫折してしまい、自分に自信がないとお悩みの人におすすめですよ。
・NUDGE 実践 行動経済学 完全版
目標達成に大切な「ナッジ」について学べる本です。
ナッジとは人をより良い行動を促す手法のことで、自分に使うことで望む行動が取りやすくなります。
意志力が弱いけど行動を変えたいという方におすすめの本です。