睡眠は認知機能、記憶力を高めて、気分を改善してくれたりする人間の体に欠かせない重要な機能です。睡眠について最近思ったのが、有名なスポーツ選手って睡眠時間が長いんですよね。
野球でシーズンMVPを獲得した大谷翔平選手は1日10時間以上寝ると言っていますし、テニスで元世界ランク1位のロジャー・フェデラーは11~12時間、人類史上最速のスプリンターと呼ばれるウサイン・ボルトは1日10時間の睡眠を取ると述べています。
ちなみに全世界の平均睡眠時間は7時間9分らしいです。世界トップの成績を出したプロスポーツ選手がこれだけ寝ているのは何か意味があるはずでしょう。
そこで今回は、「睡眠時間を増やすだけで運動パフォーマンスが上がるのか?」を調べたスタンフォード大学らの研究を紹介します。
参加者はスタンフォード大学バスケットボールチームの男子学生11名(平均年齢19歳)で以下の手順で行われています。
- ベースラインの2~4週間はいつもどおり寝てもらう
- 睡眠延長期間の5~7週間は1日10時間を目標に睡眠時間を増やして寝てもらう
- 睡眠時間、運動能力(スプリントタイム、フリースローや3ポイントシュート成功率)、反応時間、日中の眠気、気分の測定値を記録する
ここでの反応時間は画面に赤い点が点滅してタップするまでの時間を測るといったもので、睡眠時間によって反応時間が遅くなったり、誤タップが多くなったりすると言われています。
その結果は、
- 総睡眠時間は、ベースラインと比較して110.9±79.7分増加した
- 約85メートル走のタイムは0.7秒速くなり、フリースローが決まる確率は 10回中7.9回から8.8回、3ポイントシュートは15回中10.2回から11.6回に増えた。反応時間と眠気が減った
- 選手のやる気や気分が改善し、疲労が減った
とのこと。睡眠が8時間だったのが10時間に増えた結果、パフォーマンスが上がり、ムードが良くなり、疲労が減ったみたいですね。
研究者らは、
本研究の結果は、睡眠時間の延長というあまり考慮されないアプローチが、競技パフォーマンスにプラスの影響を与える可能性があることを強く示唆している。アスリートが最適なパフォーマンスを発揮するためには、必要な睡眠時間を正確に把握して確保することが、日々のトレーニングに不可欠な要素であると考えるべきだ。(中略)睡眠と運動能力の関係が明らかになるにつれて、最適な睡眠習慣と十分な睡眠をとることが、あらゆるレベルのスポーツで最高のパフォーマンスを発揮するために重要な役割を果たすと思われる。
と述べています。つまり、個々の理想的な睡眠時間を見つけた上で確保することが大事なんですな。
これと似たような研究は多くて、大学生のテニス選手を対象に1週間の間、毎日9時間の睡眠をとらせたところ、サーブの精度が向上し、眠気が改善したことが報告されています。
ただし、体力の消耗が激しいスポーツ選手での話なので、一般人にもそのまま適用できるかは不明です。世界的に推奨されている一般的な睡眠時間が7~9時間であることを考えても、プロスポーツ選手はより多くの睡眠時間を必要とする可能性があります。
いずれにせよ、自分の最適な睡眠時間を知ることが大事なので、みなさんも睡眠時間別に気分や仕事のパフォーマンスを記録しておくといいですね。私は8時間前後くらいが調子が良いので、睡眠時間をしっかりと確保するようにしています。
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