「何かのスキルを極めたい」
「プロフェッショナルになるための考え方や方法を知りたい」
これらの疑問を解消します。
世界チェス選手権ベスト4、全米ジュニアチェス選手権を優勝し、さらに中華杯国際太極拳選手権で優勝しているジョッシュ・ウェイツキン氏の著書『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』では、トップレベルになるための習得法を教えてくれています。著者が超一流の頭脳プレイヤーかつアスリートなのでとても説得力がありますよね。
今回は、本書の中から「様々な分野で使える超一流の習得法」を紹介します。習得法の中でも「数を忘れるための数」「より小さな円を描く」は非常に役立つ考え方なので、必見ですよ。
個人的にはスキルは広さではなく深さを求める、不快なシチュエーションをパフォーマンス向上のために利用するという点が役立ちました。不快なシチュエーションにどのように対処するかを練習するようになりましたよ。逆境を自分のスキル向上に転換できるようにマインドセットが変えられることを知ったのは大きな収穫でした。
成長は快適さや安全を犠牲にすることで促される
どんな分野であっても、卓越した優秀さを追い求めるためには、安全で平凡な道を歩むことではなく、成長のために快適さや安全を犠牲にすることが必要不可欠です。成功者たちは常により高いところを目指し、あらゆる戦いで危険を冒しています。彼らは、目先の栄光よりも、頂点を目指す過程で学んだことの方がずっと意義深いことを知っているからです。
そして、健全な態度で臨み、どんな経験でも知恵を引き出せる人ならば、道を逸れることなく最後まで突き進むことができます。それだけでなく、そういう人たちは過程を楽しんで成長することができます。
しかし、真の挑戦は困難な状況の最中にも大局的な視点を持ち続けることです。これが最大の難関であり、習得すべき技術の核心となります。ほとんどの人は障害にぶつかると諦めてしまいます。
自分で自己分析をし、自身のスタイルを解体することは、どんな分野でも成長するために必要なことです。不安定で無防備な時期、別の言い方をするなら、自分自身を客観的にとらえて、成長するための時期を過ごさなければなりません。
心をオープンにした成長マインドセットの学習アプローチを取り入れて、ピーク状態でのパフォーマンスができない期間も許容し、学習の過程で必要だと受け入れることが求められます。成功者は成長のための時間の責任を自分で背負い、困難に立ち向かう姿勢を持ち続けています。
数を忘れるための数
学びのプロセスを探求するためには、過去の経験を振り返り、どの知識や技術を取り入れて、何を捨てたのかを思い起こすことが重要です。ウェイツキン氏の成長の鍵となった学習方法は、チェスと武術の両方に通じるもので、「数を忘れるための数」と呼ばれています。これはどんな学習にも適用できます。
最初のうちは、一度に考慮できる重要な要素は1つか2つに限られますが、基礎学習が進むと多くの原理が統合されて、1つの流れとして直感的に理解できるようになります。最終的には、基本原理は自然と内面化され、無意識に身についたものとなります。
このプロセスは、学習の理解が深まるほど、繰り返されます。つまり、「数を忘れるための数」とは、学習すればするほど、自分の中に様々な知識やスキルが取り込まれ、意識することなく、より良いパフォーマンスが発揮できるようになるという学習アプローチのことを指しています。
達人は基本原理について語ることはほとんどありませんが、卓越したパフォーマンスを発揮するための土台となっています。優れたピアニストやバイオリニストは、演奏中に音符の一音一音を別個に考えなくても、完璧な音を奏でることができます。ベートーヴェンの第五を演奏する際に「ド」の音をいちいち考えていたら、流れを見失い、演奏の妨げになるでしょう。
学習プロセスを分析すると、次のような一貫したパターンが見えてきます。
- 知識を吸収する(意識的)
- 知識が内面化する(無意識、直感)
※内面化すると表面上は忘れたように見える
その結果、チェスの初心者の頃は算術的に解釈していた駒の価値が、より直感的なものへと変化します。「数を忘れるための数」の学習アプローチは芸術、科学、ビジネスなど、さまざまな分野での技術の習得にも応用できます。
より小さな円を描く
「数を忘れるための数」で知識や技術を内面化した後、「より小さな円を描く」という学習プロセスに移ります。「より小さな円を描く」とは、内面化した技術をさらに洗練させることです。
ウェイツキン氏は太極拳では、シンプルな動作を繰り返すことで、特定の技術を磨いて、身体の動作を洗練させていったとのこと。そして、小さな動作を苦労して洗練させた感覚を別の動きにも応用することで、全体が高いレベルで開花し始めたのだそう。
この原理を体験して、頭脳の枠組みに入れると、複雑な局面にも応用できます。いきなり複雑な知識やスキルを学ぼうとするのではなく、まずシンプルな技術を磨き上げましょう。シンプルな一連の技術を学ぶことで、心の平静を保ちながら複雑な動きを少しずつ吸収できるようになります。
太極拳のスパーリングでは、見た目が華やかなだけの動きは一切通用せず、一瞬で決着がつくものです。見た目の格好良さを求める余地はありません。多くの人が華麗なテクニックに目を奪われがちですが、微細でデリケートな技術を磨くことがずっと重要です。ウェイツキン氏が太極拳を学び始めてからわずか2年で全米選手権で優勝できたのは、このことを理解していたからだと言っています。
激しい競争で生き残れる者は、相手よりも技術を深く磨いた者です。トップになるためには、神秘的な技ではなく、「より小さな円を描く」というアプローチで基本的な技術を深く熟達させることが必要です。
プロフェッショナルの世界では、深さは広さに勝ります。深く掘り下げることで、自分の中に隠れた無意識的でクリエイティブな潜在性を引き出すことができるのです。
弾力性のある自立したパフォーマーになる方法
弾力性のある自立したパフォーマーに不可欠なこととして、次の三段階のプロセスがあります。
- 第一段階:自分を乱すものを柔軟に受け流す力を身につけること。
- 第二段階:自分の気を散らすものを利用して、インスピレーションへと変換すること。
- 第三段階:自分の心の中だけでインスピレーションを得られるように再現できるようになること。
ウェイツキン氏が対戦してきたチェスプレイヤーの中には、チェスの大局中に相手が足を蹴ってきたり、駒を打ち付ける音で気を散らしてきたりなどの不正行為やマナー違反を繰り返すプレイヤーがいました。勝つためにどんなことでもするという対戦相手に怒りを感じて我を忘れることがあったそう。衝動的な怒りでミスしてしまい、パフォーマンスも落ちているのが実感していたとのこと。
しかし、長期間の試行錯誤の末、怒りを振りかざす、感情を遮断したりする方法では解決できないとウェイツキン氏は気づいたそうです。逆に、その感情を利用し、より深い集中力へと導くことが大切なんだ…と。
弾力性のある自立したパフォーマーになるためには、学習アプローチとパフォーマンスの二つの要素が重要です。学習面では、怒りや自我、恐怖心を認識し、技術的な向上を目指すこと。パフォーマンス面では、感情を観察して冷静さを保つことが第一歩であり、次に心の奥底から沸き起こる激情を利用して強い集中力へと導くようにすることです。
怒りや恐れ、高揚感をアドバンテージに変える力が、真の成長への道筋となります。自分の感情を利用し、より高いパフォーマンスを目指すことで、弾力性と自立を持ったパフォーマーに必須です。
まとめ:トップになるためには自分の内面と向き合うことが不可欠
トップになるためには、シンプルな基本を少しずつ身に付けて、それらを洗練させることが重要です。まずは「数を忘れるための数」、「小さな円を描く」の順番で取り組んでみてくださいね。
『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』では、この他にもプロのメンタル面や試合中にどのように思考して自分を高め続けていくかなどを知ることができます。何かの分野で卓越した能力を身に付けたいと考えている方はぜひ読んでみるといいですよ。
ハイパフォーマーになるには日ごろから内省を繰り返すことが重要です。再考については「再考は人生のあらゆる場面で役立つ!メリットと3つの実践法」を読んでみてください。
私もウェイツキン氏のようにピンチをチャンスと捉えて徹底的に弱点を克服するアプローチを取りたいと思いました。ライターとして足りない部分は多いので、一つのスキルに絞って少しずつ身に付けていくかな…
プロフェッショナルになるためのおすすめ本
習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法
・習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法
「習得への情熱」はチェスと太極拳のトッププレイヤーであるウェイツキン氏が書いた本で、トップに至るまでの思考や練習法を教えてくれます。
技術や知識を内面化する「数を忘れるための数」、内面化した技術を高度化する「小さな円を描く」といった一流になるための学習アプローチを学ぶことができます。
特定の分野でトップになりたい方におすすめな本です。
PEAK PERFORMANCE 最強の成長術
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この本は最高のパフォーマンスを出すために成長し続ける方法を教えてくれます。
成長の方程式「負荷+休息=成長」という考え方とその実践法を知ることができます。
頑張っているけど疲れを感じる、達成したい成果が出ないという問題を解決してくれますよ。